涙で光るガラス (ページ13)

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『雷、怖いから。気紛らわせてよ』

握っている手にチカラを入れると、一瞬海斗くんの左手にもチカラが入った。

右手が私の左頬に触れる。

親指で私の涙を拭う海斗くんの手はとても温かい。

松倉「まずは泣き止んでからでしょ」

そのまま顔が近づいてきて、左目尻にキスをする。

『っ、海斗くん』

松倉「泣き止んだ？」

ビックリしたのか、たしかに涙はピタッと治まった。

『今の、その…』

ただ、さっきの右手みたいに涙を拭ってくれるだけで良かったのに

なんでわざわざキスしたの？

松倉「…次、ここにしていい？」

左頬に添えられていた右手の親指で、私の唇をなぞる。

身体が硬直して返事ができなくなっていると、カーテンの隙間から雷の光が差し込んで部屋の中をピカッと照らした。

また雷が落ちる、そう思った時

『…ﾝｯ』

両手で耳を塞いで、唇同士が触れた。

触れて、離れて、また触れて

『…ｯ海斗くんっ』

薄く目を開けると目が合って恥ずかしさが増してくる。

海斗くんが唇を離して"ふふっ"と笑うと

耳から手が離れて、右手で私の頭を撫でてくる。

松倉「まだ怖い？」

私が顔を横に振ると、海斗くんは"よかった"と笑ってもう一度キスをしてきた。

ドキドキして、唇が触れた瞬間に雷のことなんて忘れていた。

耳を塞いでくれてたから、尚更。

『…でもこの方法じゃ、海斗くんがいなきゃ克服できないよ』

ねぇ海斗くん、この意味分かる？

海斗くんが良いの。

海斗くんじゃなきゃ、嫌。

服の裾を摘んで少し引っ張ると、身体に腕を回されて抱きしめられた。

松倉「俺としかしないで」

耳元で聞こえる声。

どうしよう、心臓が爆発しそう。

松倉「…なんてね」

"やっぱ俺お皿洗うわ"と立ち上がる海斗くん越しに見えた家の掛け時計。

もう家を出ないと終電に間に合わない時間になっている。

『海斗くん、終電の時間…』

松倉「雨が止むまで、居ていいんでしょ？」

…海斗くんって、意外と策士なのかもしれない。