涙で光るガラス (ページ2)

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『あっ、時間！』

もうこのカフェを出ないと電車の時間に間に合わなくなる。

『次、いついらっしゃいますか？』

「仕事の時間バラバラだからあまり分からないんですけど、逆に平日ならいらっしゃいますか？」

『朝ならこれくらいの時間までいます』

「じゃあ、また会えた時にハンカチお返ししますね！」

お互い、名前と年齢を伝え合った。

金髪の男の人は、海斗っていう名前らしい。

歳は、同い年。

電車に乗って、カバンからさっき借りた本を取り出す。

…よし、読むぞ。

会社の最寄りに着くまでじっくり読んで、自分の中では集中して読めた気がする。

今度会うまでに読み切らなきゃ。

海斗くん、あの辺でお仕事してるのかな。

仕事の時間がバラバラって言ってたけど、何のお仕事なんだろう。

夜勤とかあるのかな。

前、ギターケースを背負って来たことがあった気がするから、何かそういう趣味があるのか、それもお仕事なのか。

海斗くんが貸してくれた本は、本当に面白くて仕事中も続きが気になっちゃって、帰ってからその日のうちに徹夜して読んじゃった。

翌日、翌々日と時間が過ぎても海斗くんは来なかった。

次いつ会えるかも分からなくて、そんな中もしかしたら私とすれ違いでここに来ているかもしれないと思って、店主である親戚のおじさんに本を渡してもらうように頼んだ。

もう時間だし、お店を出ようとドアに手をかけようとした時

松倉「間に合った…！！」

息を切らして、カフェのドアを開けてたまま立っている海斗くんの姿があった。

片手には私のハンカチが握りしめられている。

キャップ、メガネ、マスクを装備していて、なんだか芸能人みたい。

『海斗くん、そんなに急がなくても大丈夫ですよ』

松倉「だってAちゃん、もう出勤の時間ですよね？これ返さなきゃと思って」

『ありがとうございます。私さっき店主に本預けちゃったので、後で声掛けてみてください』

"じゃあ"と海斗くんの横を通ろうとすると、腕を掴まれる。

松倉「まって！行く前に、連絡先交換してくれませんか？」

『私とですか？』

松倉「だって、まだ感想聞けてない」

『…あ、わかりました。LINEでいいですか？』

松倉「はい。あ、でもひとつお願いしなきゃいけないことがあって」

『なんですか？』

松倉「俺とのことは全部、誰にも話さないで秘密にしてください」

…なにそれ、変なお願い。