涙で光るガラス (ページ1)

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毎朝、近所にある親戚が営んでいる海が見える古民家カフェでコーヒーを飲んでから出勤する。

私はいつも海が見えるカウンター席の右から2番目のところに座る。

一番端よりも海が広々と見えるから。

一番端の席、つまり隣に座っている男の人は金髪で、ハイブランドのロゴ入りのTシャツを着ている。

たまに来るこの人は、小説を読んだり自己啓発本を読んだりしていて、いつもコーヒーとドーナツを頼んでいる。

今日は小説を読んでいたのか、涙を流していてカバンをあさっている。

「あー、やべぇ…」

涙を拭くものを探していたけど見つからなかったのかな。

『あの』

「っ！」

声をかけると、ビクッと身体を震わせて驚かれる。

『あ、驚かせてしまってごめんなさい。よかったらこれ…』

「えっ、あ、ありがとうございます」

私がハンカチを差し出すと、くりくりした目から流れる涙を拭いてニコッと笑った。

「すいません、恥ずかしいとこ見られちゃいましたね」

『そんなに感動する本だったんですか？』

「はい。よかったら読んでみますか？」

差し出される分厚い本。

『私、小説読むの遅くて長くお借りしちゃいますし、大丈夫です』

「あ、返すのは僕読み終わったのでいつでもいいんですけど…。ここ、いつも来てるんですよね？僕が来たらいつもこの席にいらっしゃる気がして」

『ここ、親戚が経営してるカフェで、平日は毎朝来てるんです』

「そうなんですか！じゃあこれ、本当にいい話なのでよかったら読んでみてください！」

『あー…』

私、本当に活字を読んでいくのが苦手ですぐに飽きちゃうし、借りても読む気になるかどうか。

「すいません、迷惑でしたよね。ハンカチのお礼に何か出来ればって思ったんですけど…」

あからさまに犬がしっぽを垂らすように落ち込んだ男の人。

なんだか、可哀想になってくる。

『あの、借ります』

「ほんとですか！？よかったー」

今度は子供みたいに喜んで、この男の人はどうやら感情が全部顔に出ちゃうみたい。