涙で光るガラス (ページ10)

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テーブルに持っていこうとしたら、後ろから手が伸びてきて、驚いて身体がビクッと動いた。

松倉「あ、ビックリさせちゃった？ごめん」

『ううん、大丈夫』

振り向くと、私の身体に触れるくらい近い距離に海斗くんがいて何とか平常心を保つのに必死。

そのまま私の右手のすぐ横を、海斗くんの右手が横切ってパスタを盛り付けたお皿を持つ。

松倉「作ってくれてありがとう。持ってくね」

『うん』

海斗くんが言葉にするありがとうとごめんねは、なんだかとても温かい。

松倉「写真、撮ってもいい？」

『いいけど、こんなの撮るの？』

松倉「こんなのって言わないでよ。折角Aちゃんが作ってくれたんだから、記憶だけじゃなくて記録にも残しておきたいの」

『ただのパスタなんだけどなぁ…』

松倉「ん、撮った。ありがと」

『じゃあ食べよっか』

ふたりでいただきますをして、パスタをフォークで巻いて口に入れる。

塩気足りなかったかな、大丈夫かな。

松倉「うまっ！」

『本当？よかった』

頬に沢山含んでもぐもぐしている海斗くん。

小動物みたいで可愛い。

パスタを食べ終えると、海斗くんは"もうパスタ食べて身体温まった！"なんてニコニコしながら食器をキッチンまで持って行ってくれて

お皿洗うよって言ってくれたけど、お客さんだからと断った。

結局ココアは出さずに、海斗くんが買ってきてくれたジュースを開けてお菓子を食べる。

小学生の頃の習い事とか、中学校の部活の話とか、お互い知らなかったことを沢山話した。

でも、今の海斗くんのことはなんだか怖くて聞けなかった。

松倉「終電あるし、もうそろそろ帰ろうかな」

こんな時、帰らないでなんて言ったら嫌われるかな。

まだ一緒にいたいって言ったら、一緒にいてくれるかな。

『駅まで送るね』

…絶対にそんなこと言えない。

松倉「いいよ、スマホで調べれば帰れるから」

今日はギターを持っていないけど、リュックを背負っていて、スニーカーを履いて玄関の扉を開けると、急にピカッと空が光った。

松倉「え、雷？」

『嘘…』

直ぐに聞こえてきたゴロゴロという大きな音。

『っ！』

小さい頃から雷が苦手な私は、反射的に海斗くんの服の裾を掴んだ。