涙で光るガラス (ページ38)

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宮近「松倉、それ恋だよ」

楽屋でちゃかに朝活の話をしている時に、流れでAちゃんの話をしたら言われた言葉。

松倉「え？いやいやないからそれは」

宮近「鈍感すぎ」

恋？ないない。

普段と少し違う出会い方をしたから

業界の人以外でイチから友達になることなんてなかなかないから

だから、気になるだけで。

次にカフェに行けた時は、Aちゃんがファッション雑誌を持っていて

"海斗くんがいつも本読んでるの見てて、どうせコーヒー飲んで海眺めてるだけなら、本読むのもいいかなって"

そう言ってペラペラと雑誌をめくっていた。

…どうしよう、めちゃくちゃ嬉しいしなんだか健気で可愛い。

そう考えているうちに脳が冷静に働き出して、見覚えのある表紙に焦りを感じる。

…この雑誌、この表紙、まずいかも。

松倉「ちょっと見せて」

『いいよ』

松倉「…ねぇ、これ読んじゃダメ」

グループとして特集を組まれたこの号は、見せたくなかった。

職業を知られなくなかった。

代わりのファッション誌を買うという約束をして、さっきまでAちゃんが持っていたファッション誌はカバンにしまう。

カフェから出てシーグラスを探して、お互い交換した。

手に乗せられたのは白シーグラスで、どことなくハートに見える。

松倉「ハート型？」

『可愛いでしょ？』

太陽の光が反射した海みたいにキラキラした無邪気な笑顔。

海風に靡く綺麗なサラサラとした髪。

松倉「うん、可愛い」

Aちゃんが、可愛い。

仕事に行く時間になると、毎回"またね、海斗くん"とスカートを翻して海辺から去る姿はどこか儚くて。

またね、そう言ってくれているのに、すぐ会いたくなる。

…なんだ、ちゃかの言う通り俺ってめちゃくちゃ鈍感だったのかも。

Aちゃんのこと、好きだからこんなに気にするんだ。

俺ってこんなに愛重いタイプだったかな。