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第一章 記憶喪失もどき ページ2

ありもしない体に何かが巡る感覚。

さっき、別れたはずの体があって、動かしやすくなる感覚。

顔に触れる私の髪。

目を開けば、見たこともない世界が広がっていた。

幸いさっきの男たちも居ない。


「けど、何処だここ?」


周りは漫画とかで見たことのある格好をした人ばかり。
自分のセーラーも周りには溶け込んで…いると思いたい。

すれ違う人たちが皆こちらをじろじろと見てくる。
もしかしたら目立ってるかもしれない。


右側を見ると、とかげの大きいバージョンに引かれる馬車が。

「この際、馬車じゃなくて違う呼び方が似合うと思うな。」

誰も私の言葉を聞いてないから本当の呼び名を教えてくれない。だから、この話題に関してはスルーを決めた。


左を見ると、リンゴ売りのおじさんと目があった。

「こんにちは、おじいさん。これ、何のドッキリ?早めにネタばらししてくれると助かるんだけど。」

「何を言うとるんじゃ小娘。
リンガ買うのか?買わんのか?」

「何円?」

「えん?」

首をかしげるおじいさんに、嫌な予感がした。

「銅貨2枚だ。」

「ごめん、おじいさん、私お金無いかも。」

苦笑いで一歩後ずさる。

「そうか、ならとっととどっか行ってしまえ。商売の邪魔だ。」

「ほんと、すいませんでした。」

人気の無い裏路地に走って逃げる。


あのおじさんの目は真実味を帯びていた。
ここは日本じゃない。
言葉は通じるけど、お金が違うし、服装も、乗り物も。

諦めるしかなかった

「死んで、異世界に来ましたか…」

手に汗がにじむ。
暑くもないのに、頬を伝う冷たい汗。

「誰か、ヘルプミー」

そう言っても、返ってくる言葉は何も無いのだった。


ここで、時間を潰す訳にもいかないので、適当に足を進める。

路地から出て、大きな通りをなんとなく歩く。

死んだら死んだで運がなかった。
どうせ一回死んだ身だし…そうして、首に手を当てる。

あの気持ち悪い笑い声、触られた手と首の皮膚を切り落としたくなるぐらい、嫌悪感がわいてくる。

何をしたらいいか、どうしようもできず、ため息がこぼれた。

第一章 2→←序章 私は死んだ



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しぇるふぃあ。 - 初めまして!ラインハルトさんの爽やかさ眩しさの描かれ方がすごく好きです。強めの主人公がこれからどんな道をあゆむか楽しみになってきました…!更新楽しみにしていますがご無理はなさらず! (2017年5月13日 14時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:a.ze | 作成日時:2017年4月6日 12時

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