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引っ越し当日。
更新はまだのはずなのに、勝手に解約されていて、手回しのよさに呆れている。
もともと荷物も少ないから、引っ越し業者さんがあっという間にダンボールに詰めていくのを、これまた呆然と眺めていた。
『では、お引っ越し先で!』
爽やかな引っ越し業者さんが小さいトラックに乗り込んで走り去った。
荷物が何1つなくなったガランとした部屋で、この部屋に越してきてからの事を思い出して感傷に浸っていると、玄関のチャイムが恐ろしいほどに連打された。
『……はい』
玄関を開けると、少し不機嫌な臣さんが立っていた。
『遅ぇーよ』
『え?あの…』
『行くぞ!』
臣さんに引っ張り出されて鍵を閉めた。
『お…広臣の部屋で待ってると思ってた』
『そのつもりだったけどさ、じっとしてらんなくて』
そう言って、照れたように笑う臣さんの右手をそっと握った。
それで機嫌の良くなった臣さんに連れられて食料品の調達に…
『あの…部屋に行かなくていいのかな?
荷物届くと思うんだけど……』
『あぁ、事務所繋がりの業者だから大丈夫だと思うけど、念のためにマネージャーに居てもらってるから』
『そうで…じゃなくて、そうなんだ』
そして、ふと気付く。
『今更だけど、一緒に住んで大丈夫なのかな?』
『なにが?』
『ほら、その、写真…とか?』
『あー、一緒に出入りしなきゃ大丈夫だわ(笑)』
そういうもんなの?
軽くない?
そりゃ気を付けますけども…
何にすっかなぁー♪
ってお肉コーナーでおめめをキラキラさせている臣さんの背中を見ながら苦笑いしか出てこなかった。
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作者名:花梨 | 作成日時:2018年7月21日 23時