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『そんなに痛かった?』




低くて甘い、優しい声が頭の上から落ちてくる。




『顔上げてみ?』




おずおずと顔を上げると、臣さんはちょっとびっくりしたあと、優しく笑って私の目の端っこに残る涙を親指で拭ってくれた。




『結構いい音しちゃってたもんな(笑)』




ですね
ゴンっ!ってなりました。




でもね、この涙は痛くて出てきたわけじゃないんですよ?




『臣さん』





『んー?』





臣さんは私の頬っぺたに手を添えている。




『大丈夫ですか?』





『なにが?(笑)それはAだろ?』





そうじゃなくてですね



いろいろ大丈夫ですか?って事なんですけど



その いろいろ を具体的に説明する勇気はなくて





『そうでした(笑)』





こうしてオトボケのAちゃんを演じるしか出来ません。




『臣さん、今日もカッコよく仕上げますね』




『フフ(笑)うん、お願いします』




『ちょんまげ、気に入ってるんですか?』




『あー、ちょっと気に入ってる。変?』





私 個人的には短髪で黒髪が好きなんですけど
分かってねぇな って思われるかもしれないし
嫌われるかもしれないからそんな事言えないです。




『カッコいいです』




『そ?良かった(笑)』





心の中にある大きな大きな不安に蓋をして
いつまで続くか分からないこの関係を
守る事に必死でした。





『年末まで歌番組でいっぱいですね』





『そうなんだよね。有難いです(笑)』





『たくさんの方が出演されますね』




『うん。某事務所のアイドルさん達に浮気しないようにしてください(笑)』




そんな事あるはずないです。
私はあの日、臣さんと初めて会ったあの日から
あなたしか見えてません。




でも、本当は楽しみにしている日があります。
浮気とかじゃないです。
ただのミーハー根性です。

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作者名:花梨 | 作成日時:2018年3月9日 23時

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