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「たかのりー、遅刻するよ」
「ねぇちゃん先行ってて」
ねぇちゃんとAと3人で一緒に歩いてた土の道
小学校までのあの道をA無しで歩くのが嫌で
かといって、1人で歩くのももっと嫌で
「やっぱり待って、ねぇちゃん！」
「もう、ほら、行くよ」
「ねぇちゃんはやい〜」
少しランドセルを乱雑に背負って
ねぇちゃんの後を追いかけた
.
何も言わずにいなくなってしまって
ねえ、A、
また明日って言わなかったのは
俺たちに明日が無かったから？
ねえ、A、Aちゃん、
おれ、さみしいよ、
秘密ごとは無し、
約束しようって言い出したのは
君の方だったのに
「・・・たくん、岩田くん、教科書読んで」
「・・・・・・あ、はい」
俺は周りにもわかるほど、
明らかに元気が無くなってしまったらしい
「最近元気が無いんです、ご家庭ではいかがですか？」
担任の先生と、保健室の先生がうちに来た
.
これは後からねぇちゃんに聞いた話なんだけど
親の愛情が足りてないのだと
母ちゃんは先生たちに責められたらしい
「お母さん、おやすみ」
「はい、お姉ちゃんおやすみなさい」
だからなのか、
ねぇちゃんが先に寝て
俺がまだ居間でテレビを見ていたその日の夜、
「たーくん、おいで」
母ちゃんが俺を " たーくん " と呼んで
ぎゅうっと、優しく、優しく、抱きしめた
「母ちゃん、・・・くるしっ」
「何かあるんなら、母ちゃんが全部話、きくよ？」
胸に詰まって、苦しかった
それを多分母ちゃんは気付いてたんだろう
大人は何もかも知ってるんだ
そんなことに小学生だった俺が気づくわけもなく
「A、がっ、Aちゃんがっ、いなくなって
おれ、一人であそんで……
神社行っても、誰もいないし
缶蹴り、……も、かくれんぼも…
でぎなくで…
おれ、さみしい・・・っ、」
母ちゃんはしばらくの間、
黙って俺を抱きしめ続けた
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作者名：葵
| 作成日時：2016年6月12日 11時
