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あれから、どれくらいの時間が流れたのだろう。
名前を奪われた私は妖怪達に捕まって、この境目の世界に放り込まれた。
以来、一年に一度。私が名前を奪われた七月のあくる日にだけ、此岸に戻る日々を送っている。
それ以外の日は、私はこの世界から抜け出す事ができない。だから、それ以外の日はひたすらにこの世界をさ迷っている。
…同じところを、ただ一人歩くだけの日々。そこには何の楽しみも無い。
そして、今年も。この日がやって来た。
唯一境目の世界から抜け出す事の出来る日が。
去年、こちらに引き摺り込んだあの子は今どうしているだろうか。
幼い頃、百鬼夜行にでくわし、怯えていたあの子。
白い軍服のよく似合う、誠実そうな青年に成長したあの子。
「…見に、行こうかな。」
そう呟いた、直後だった。
「ねぇ、」
「…え、」
誰かに、声を掛けられた。
私しかいない筈の、この世界で。
ギギギ、と。まるで錆付いた機械の様な不自然な動きで後ろを向く。
声の主を、確認する為に。
その声には、どこか聴き覚えがある様な気がしていた。
「…君、は」
見れば、あの子がいた。
相変わらず白い軍服のよく似合う、あの子が。
「一年振りだね」
「…なんで、此処に、」
此処は本来、名のある人間が来てはいけない場所なのだ。
きちんと名前のある人間には、此岸に帰る場所があるのだから。
一年前の動揺しきっていた青年と同一人物とは思えない程、目の前の彼は落ち着いている。
まるで、何か覚悟を決めたかの様に。私を見詰めている。
…これじゃあ、一年前とまるで正反対だ。
「早く、帰らないと！此処は、貴方のいるべき所じゃ、」
「A」
…一瞬。
ほんの瞬きの間。時が、止まったかの様に思えた。
それ程までに、目の前の彼が口にした言葉は破壊力を持っていた。
「…どうして、」
その名前は、…私の
「君の名前でしょ？…良い名前だね。Aって。」
「どうして、それを」
その名前は、当の昔に奪われた筈なのに。
「あれから俺、調べたんだよ。俺の故郷の町で、いなくなった女の子がいないか。そしたら、三十年くらい前に夜中に医者を呼びに行ったっきり、帰ってこなかった女の子がいてさ。」
屈んで、私と視線を合わせる彼。
なんだか、可笑しい。…初めて会った時は、私が屈む側だったのに。
「Aっていうのが、その子の名前だったんだ」
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sdfhowfd(プロフ) - にこさん» 俺得を第一に書いていた小説にそう言ってもらえて本当に嬉しいです！コメントありがとうございます！ (2018年7月15日 18時) (
レス) id: 6b862137a1 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 語彙力なくてすみません…好きです… (2018年7月13日 17時) (レス) id: d94860a230 (このIDを非表示/違反報告)
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