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だから憎たらしい王の頼みを聞き入れて、どう足掻いたって場違いな騎士団の一員に加わった。
そして、彼の気配を間近に感じながらも口を閉ざし、彼の存在をひた隠しにしていたのだ。
その結果…彼は予想通り、私の目の前に姿を見せてくれた。
明るい緑色のパーカーを纏い、己の牙で騎士団員達の喉笛にかみつく姿を。
「…つまり、俺はまんまとAに嵌められた訳や！」
ヒヒヒ、と。大きな口を限界まで開け。無遠慮に笑い声を上げる彼。
待ち望んでいたその声は、聞いていてとても心地が良い。
「…こんなずるい女で、幻滅した？」
不安げに問い掛ければ、答えはすぐに返ってくる。
「まさか。寧ろ、更に惚れたわ。」
ニヤリと意地悪そうに笑う彼に、体がぞくりと震える。
怯えや恐怖の類ではない、正真正銘歓喜の震え。
まん丸の美しいお月様をバックに立つ彼は私の首元に顔を寄せ、最後の警告をする。
「…もう、人間には戻れなくなるで。それでもええん？」
「構わない、から。…早く、私を貴方と同じにして。」
「了解。」
言うなり、彼は私の首筋に牙を突き立てる。
連中を殺した時のそれとは違い、浅く、けれども少しだけ出血はする程度に。
ほんの直前まで私の中を巡っていた血液が彼の口内に流れ込んで行く感覚に、思わず身震いしてしまった。
人でなくなってゆくのが、自分でも分かる。
目の前がチカチカして、頭がボウッとして。
彼が私から離れたのだと、漸く理解したのは、彼の暗闇の中でも爛々と輝く目と、私の目が出会った時だった。
「ひひ。…お揃い、やな」
本当に、彼と同じになれたのだろうか。
確認したい一心で自らの頬にそろりと手を伸ばし、軽く押してみる。
すると厚い皮膚の上からでも分かってしまう程に、大きく鋭い牙の感触があった。
彼は私のそんな間の抜けた言動でさえも、愛しそうに眺めている。
「長かった…。これでやっと、Aの事連れ出せるわ。」
そう言うと、彼はまるで壊れ物に触れるかの様に、優しく私の事を抱き寄せる。
初めて知る、人肌。
…まあ、彼は人ではないのだけど。
初めて知る温もりを貪る様に、彼の厚い胸板に顔を埋める。
…少し、涙が出そうになったのは内緒だ。
英雄は、もう二度と孵る事は無い。
ひたすらに私の事を愛してくれる存在を、見つけたから。
- 金 運: ★☆☆☆☆
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sdfhowfd(プロフ) - にこさん» 俺得を第一に書いていた小説にそう言ってもらえて本当に嬉しいです！コメントありがとうございます！ (2018年7月15日 18時) (
レス) id: 6b862137a1 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 語彙力なくてすみません…好きです… (2018年7月13日 17時) (レス) id: d94860a230 (このIDを非表示/違反報告)
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