. ページ39
──────────
怖いことを自覚したら、もう止まらなくて。
楽屋に戻って、溢れる涙は正門くんが拭い続けてくれる。
『ごめん、』
「んーん、何も謝ることないよ」
わたしが両手を広げずとも抱きしめて、頭を撫でてくれる。
「なんか嫌なことあった？」
『いや、なにも…。何もないねん、けど』
自分の才能は信じてる。自分の努力も、メンバーの支えも。
でもこの曲が、Aぇ!groupの歌になるこの曲が、あたしが作ったという理由で受け入れてもらわれへんかったら、どうしよう。
あたしがグループの強みである側面、邪魔になることも知ってる。受け入れてやっていくとみんなで決めた。
はずやのに、怖くてたまらん。
そもそも、ほんまに、いい曲なんかな。
自信満々にみんなに聴かせて、レコーディングして、振り付けして、みんな褒めてくれたけど、あかんかったんちゃうかな。
「そんなわけないよ。めっっっちゃ、いい曲やで。贔屓目なしに、間違いなく、人気なるよ」
うんうんと話を聞いてくれていた正門くんが、わたしの頬を手で覆った。
さっきまでの優しい表情から一転して真面目な顔で、まっすぐにわたしを見据える。
「Aがどう思ってようと、別にいいよ。俺らはこの歌気に入ってるし、歌う。もう俺らのもんや」
『…そっか。もう、うちらの曲なんや』
「せやで。もうAだけの曲じゃないから、もしこの曲がウケへんかったとしても、それは俺らのせいやねん」
『…それは、』
「A含めな」
『、うん』
「7人で歌うねん。Aも含めて反省会や。やろ？」
『ん、せやな』
もうこの曲は手放したみたいなもん。
あたしが作ったけど、Aぇ!groupに提供して、レコーディングした。あたしだけの歌じゃない。
「いける？」
『うん。泣いたら吹っ切れた』
「よし。てか、そこが怖いんやったら、Aが作った歌やって公表せんかったらええねん」
『…それが売り文句になるんちゃうの？』
「なるやろうけど、別に公表せんくても絶対いけんで、こ
の曲」
めっちゃいいもん。実力試し、してみる？
正門くんの瞳に野心が覗いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 379人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はに | 作成日時：2023年6月19日 13時
