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side K
時が止まるって、こういうことを言うんやと思った。
全員一歩も動けず、声すら出てへんかった。
Aが泣くなんて、初めてやったから。
正確に言うと初めてではない。
ライブで感極まって泣いている姿を何度か見たことがあるし、映画とかでもたまに泣いてる。
でも、あんなふうに、ぼろぼろと。
『どうしたらいいですか』なんて本気のSOSを、泣きながら訴えて。
まっさんの名前を呟いたAは、まっさんに肩を抱かれて消えてった。
『すみません、休憩にさせてください』
マネージャーがあちこちに頭を下げて、誠也くんはため息をついて考え込んでる。
俺、あかんな。なにがリーダーやねん。
Aに注意した誠也くんも、Aを連れ立ったまっさんも、スタッフさんに謝罪して休憩取ったマネージャーも。
どれかひとつでも、俺がやらなあかんかったのに。
こじけん、と呼ばれて振り返る。
この場に俺をそう呼ぶのはひとりしかおらん。
「休憩しよや」
「…おー」
水を２本持って、ぶらぶらと腕を揺らして近付いてきた大晴。
２人並んでその場に座り込む。
「泣いてたな」
「あんな泣いてんの、初めて見た」
「俺も。何があったんやろな」
「大晴何も聞いてない？」
「聞いてないよ。Aそういうの言わんやん」
俺らには言わんだけで、ほんまは流星とか康二くんに相談したかったんやろか。それとも大倉くんとか。
「…俺らには、頼られへんのよなきっと」
んー、と大晴が天井を仰ぐ。
「…俺は、Aの甘える枠から外れてるから」
「…大晴にこそ、なんでも素直に言いそうやけどな」
「そう？」
「大晴やったら、そのままAのこと受け止めるやろ」
「ん、まあ。Aが俺にすることそのまま返すだけやし」
たぶん俺はあかん。Aに対してはきっといらんことまで指摘してまうから、Aは俺に甘えてこん。
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作者名：はに | 作成日時：2023年6月19日 13時
