2020.11 ページ36
オリックス劇場でリハーサル中、なんか気持ち悪くて、いらいらして仕方がなかった。
理由は分かってて、あたしが作った新曲。
いい曲ができたと思う。自信ある。
メンバーの歌い癖を考えて歌割り振って、こだわっていいレコーディングができた。はずやねんけど。
襲いかかる不安。
批判の声はいつまでも慣れへん。
評価されたくて音楽をやってきたわけちゃうけど。
これを否定されたら、あたしの音楽は、意味あんのかな。
末「A」
『はい』
末「集中できてへん」
『すみません』
みんなの視線が集まる。ちびっこが不安そうにこっちを見てて、情けないなあ。
末「別にミスってないし、いけてるよ。でも何考えてんの？」
『、』
口を開こうとしても、何も出てんくて。
やって、歌ってくれたみんなに失礼や。
一緒に振り付けしてくれた振付師さんにも、GO出してくれた横山くんと大倉くんにも、ファンのみんなにも。
末「今までそんなん無かったやん。集中すんの得意やろ。なんかあんの？」
そうかな。集中、できてたんかな。
晶哉はすごいな、こんなことをあの歳でやってのけたんか。
誠也くんへの返事は一個も出てこんのに、いらない思考だけがずるずる回る。
あ、これが集中できてないってことか。
末「…なんで何も言わんの」
『…わかんないです。わたし、どうしたらいいですか』
みんながギョッとしてるのが見えて、自分が嫌になる。
泣きたくて泣いてるんちゃうねん、勝手に出てくるだけで。
泣きたくないよ、あんたらみたいな男らしい人らに囲まれて。
女々しいとか、めんどいとか絶対思われたくない。
『まさかどくん、』
正「、なに？」
『まさかどくんがいいです、』
正門くんになら、正直に言えると思った。
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作者名：はに | 作成日時：2023年6月19日 13時
