こっちへおいで 【現パロ】【心】 ページ7
注意
◆ジャックハートがリクルートするだけの話
私はどちらかというとよく夢を見る方だ。
夢を見るのは眠りが浅い時だと聞いたことがあるが、決して寝つきが悪いわけじゃない。ただ、奇妙なことにここ最近、毎日のように同じ男が現れるのだ。
その男は白黒のスーツと帽子を身に纏っている。所々に赤いハートが飾られていた。男がハートなんて!と思うかもしれないが、彼はまるでハートを生まれ持ったかのように着こなしていた。
場所は決まってどこかの誕生日のパーティー会場。…いや、誕生日なんて言ったら彼は怒るのだ。
「誕生日だって?とんでもない!今日は僕と君の生まれない日さ!」
白いクロスの大きな長テーブルに色とりどりのポットやティーカップが置かれたそこは、どう見て誕生日パーティーの真っ最中といった様子だが、彼曰く、これは生まれない日を祝うためのもの。
確かにそこには彼しかおらず、周りは真っ黒な空間だった。ポツポツと草木が見えるが、夢のせいだろうか、他のとこには目が行かず、はっきりとした色を持つテーブルと彼に視線がいった。
彼はいつも私に「待ってたんだ」と嬉しそうに笑って手を引いて席に着かせた。すぐにお茶を出してティーポットと彼の歌を聴かせてくれるのだ。
その歌声を聞いていると、私はお酒を飲んだ後のようにフワフワと楽しい気持ちになり、居心地が良く思えてくる。
彼はそんな私を見て、
「ねぇ、楽しいよね?」
「ずっとここにいていいんだよ!」
甘えた子供のように魅力的な誘惑をしてくる。
それもいいかもしれない、と思った矢先に、いつもタイミングよく無機質な金属音が鳴り響く。
その途端、彼は寂しそうな顔をして「またあとで」と苦笑いで手を振るのだ。
そして私の夢が終わる。
目が覚めるとそこはいつも通り寝室で、私は胸がポッカリと開いてしまったような気持ちになった。
そして決まって、私は『彼』の顔が思い出せない。
「…それで、いつも通りの生活に戻るんです。不思議じゃないですか?」
「何が?」
「だから、いつも同じ夢を見るんですってば!」
バイト先の先輩に愚痴のように相談してみたが、彼は聞いていたのかいないのか、よくわからないような返事をした。
自由奔放な彼に相談したのが間違いだったのかもしれない。
仕事に戻ろうと背を向ける私に、その後ろで彼はため息をついた。
「早くこっちに来ちゃえばいいのに」
彼はパーマを揺らしながらにんまりと笑った。
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白い屈み(プロフ) - 全部の話がとても面白くて好きです!アップルポイズンの話は、本当にヴィランだな、と思いました。エイトフットのはしゃぎ様がとても可愛かったです… (2018年1月8日 20時) (レス) id: 5532ecd73c (このIDを非表示/違反報告)
スクリーマー(プロフ) - ヤタガラスさん» ご指摘ありがとうございます。見えにくいかもしれませんが、漢字が鳥(トリ)ではなく、烏(カラス)になっているんです。鳥と烏はめっちゃ似てるんで自分でもトリって読んじゃいます。どうにかして改善させたいですね・・・。コメントありがとうございました! (2016年9月20日 18時) (レス) id: 2bba69c7c1 (このIDを非表示/違反報告)
ヤタガラス(プロフ) - マルフィは、カラスですよ? (2016年9月19日 6時) (レス) id: a448b6951f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スクリーマー | 作成日時:2016年4月23日 22時