検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:23,529 hit

こっちへおいで 【現パロ】【心】 ページ7

注意
◆ジャックハートがリクルートするだけの話






私はどちらかというとよく夢を見る方だ。

夢を見るのは眠りが浅い時だと聞いたことがあるが、決して寝つきが悪いわけじゃない。ただ、奇妙なことにここ最近、毎日のように同じ男が現れるのだ。

その男は白黒のスーツと帽子を身に纏っている。所々に赤いハートが飾られていた。男がハートなんて!と思うかもしれないが、彼はまるでハートを生まれ持ったかのように着こなしていた。

場所は決まってどこかの誕生日のパーティー会場。…いや、誕生日なんて言ったら彼は怒るのだ。


「誕生日だって?とんでもない!今日は僕と君の生まれない日さ!」


白いクロスの大きな長テーブルに色とりどりのポットやティーカップが置かれたそこは、どう見て誕生日パーティーの真っ最中といった様子だが、彼曰く、これは生まれない日を祝うためのもの。

確かにそこには彼しかおらず、周りは真っ黒な空間だった。ポツポツと草木が見えるが、夢のせいだろうか、他のとこには目が行かず、はっきりとした色を持つテーブルと彼に視線がいった。

彼はいつも私に「待ってたんだ」と嬉しそうに笑って手を引いて席に着かせた。すぐにお茶を出してティーポットと彼の歌を聴かせてくれるのだ。

その歌声を聞いていると、私はお酒を飲んだ後のようにフワフワと楽しい気持ちになり、居心地が良く思えてくる。

彼はそんな私を見て、


「ねぇ、楽しいよね?」

「ずっとここにいていいんだよ!」


甘えた子供のように魅力的な誘惑をしてくる。

それもいいかもしれない、と思った矢先に、いつもタイミングよく無機質な金属音が鳴り響く。

その途端、彼は寂しそうな顔をして「またあとで」と苦笑いで手を振るのだ。

そして私の夢が終わる。

目が覚めるとそこはいつも通り寝室で、私は胸がポッカリと開いてしまったような気持ちになった。

そして決まって、私は『彼』の顔が思い出せない。

 

「…それで、いつも通りの生活に戻るんです。不思議じゃないですか?」

「何が?」

「だから、いつも同じ夢を見るんですってば!」


バイト先の先輩に愚痴のように相談してみたが、彼は聞いていたのかいないのか、よくわからないような返事をした。

自由奔放な彼に相談したのが間違いだったのかもしれない。

仕事に戻ろうと背を向ける私に、その後ろで彼はため息をついた。


「早くこっちに来ちゃえばいいのに」


彼はパーマを揺らしながらにんまりと笑った。

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)


←ハゲタカ 【バッドエンド】【現パロ】【林檎】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
28人がお気に入り
設定タグ:手下 , ヴィランズ , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白い屈み(プロフ) - 全部の話がとても面白くて好きです!アップルポイズンの話は、本当にヴィランだな、と思いました。エイトフットのはしゃぎ様がとても可愛かったです… (2018年1月8日 20時) (レス) id: 5532ecd73c (このIDを非表示/違反報告)
スクリーマー(プロフ) - ヤタガラスさん» ご指摘ありがとうございます。見えにくいかもしれませんが、漢字が鳥(トリ)ではなく、烏(カラス)になっているんです。鳥と烏はめっちゃ似てるんで自分でもトリって読んじゃいます。どうにかして改善させたいですね・・・。コメントありがとうございました! (2016年9月20日 18時) (レス) id: 2bba69c7c1 (このIDを非表示/違反報告)
ヤタガラス(プロフ) - マルフィは、カラスですよ? (2016年9月19日 6時) (レス) id: a448b6951f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:スクリーマー | 作成日時:2016年4月23日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。