ハゲタカ 【バッドエンド】【現パロ】【林檎】 ページ6
注意
◆彼=アップルポイズン
◆不謹慎
友人である彼は、私がケガをして入院したときは大変慌てたようで、大学の講義をすっぽかして飛んできたらしい。
医学部だか薬学部だか知らないが、レベルの高い大学なのに、万が一単位を落としたら大変だと彼を叱れば、「Aが心配だった」と申し訳なさそうに眉を下げるものだから、私が申し訳なくなってしまった。
それから彼は毎日のように私のお見舞いに来てくれた。
彼はいつも林檎を一つ持ってきて、自分のナイフで器用に切り分けて見せてくれた。
かわいいウサギの形に切ってみたり、おしゃれな模様を刻んでみたり。
長身の彼にそんなことができると知らなかった私はとても驚いたが、そのギャップにやられる女は多いのだろうと他人事のように考えた。
「Aのために剥いた」
「Aが全部食べてくれ」
彼は毎日そう言った。
元からよく食べる方だった私にとって、林檎を一つ食べるくらい簡単なことで、皿に並べられた林檎をペロリと平らげれば、彼は本当に嬉しそうに笑うのだ。
私はそれが嬉しかった。
しかし私はある日から体調を崩してしまい、ベッドから離れられなくなってしまった。
原因不明の病気に入院生活も長引くことになり、彼にも毎日来なくて大丈夫と話したが、それでも彼は毎日林檎を持ってお見舞いに来てくれた。
「毎日来るからな」
「林檎、好きだろう?少しでもいいから、食べてくれ」
遂に私は寝たきりになってしまった。それでも彼はお見舞いに来るのだ。
林檎を食べる。
体が思うように動かなくなった。それでも彼は来る。
林檎を食べる。
しゃべることができなくなった。それでも彼は来る。
林檎を食べる。
私はある日気づいてしまった。しかしそれは今更どうすることもできないことだった。
気付くには遅すぎたのだ。
今日も彼はここに来ていた。私が食べやすいように隣でシャリシャリと林檎をすりおろしている。
嗅ぎなれた林檎の匂いはいつも通り。でも今思えば、最初の頃よりも匂いが強くなっているような気がする。
すりおろした林檎をそっとスプーンで救って私の口に運ぶ。私がそれを飲み込むのを静かに見守り、彼は満足そうに笑った。
「(貴方が私を殺すんだね)」
思い切りの皮肉を込めて傍に立つ彼を笑って見上げるが、きっとこの声は届いてないだろう。
彼はただうっとりと私を見下ろして、頬を撫でた。
「きれいだよ」
彼は私の死期を待つハゲタカだ。
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白い屈み(プロフ) - 全部の話がとても面白くて好きです!アップルポイズンの話は、本当にヴィランだな、と思いました。エイトフットのはしゃぎ様がとても可愛かったです… (2018年1月8日 20時) (レス) id: 5532ecd73c (このIDを非表示/違反報告)
スクリーマー(プロフ) - ヤタガラスさん» ご指摘ありがとうございます。見えにくいかもしれませんが、漢字が鳥(トリ)ではなく、烏(カラス)になっているんです。鳥と烏はめっちゃ似てるんで自分でもトリって読んじゃいます。どうにかして改善させたいですね・・・。コメントありがとうございました! (2016年9月20日 18時) (レス) id: 2bba69c7c1 (このIDを非表示/違反報告)
ヤタガラス(プロフ) - マルフィは、カラスですよ? (2016年9月19日 6時) (レス) id: a448b6951f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スクリーマー | 作成日時:2016年4月23日 22時