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最終話 ページ40
「なあ。互いのことを知らないのなら、また知り合えばいいだけの話なんじゃないのか?」
「え?」
「よし、なら自己紹介をしよう。ちゃんとよーく聞いてくれよ」
「ま、まって! ……ください!」
「さっき待ってくれなかっただろうが」
目の前の彼が逃げてしまわないようにその両手を外側から包み込めば、ひゃあと細い悲鳴が上がる。前屈みになって下から二つの黒曜石を覗き込めば、左右に泳ぎまくった視線と目があった。
長野から越してきたとき、はじめてのクラスで皆の前で、緊張しながら自己紹介をしたことを思い出した。ほんのちょっぴり気合を入れて、すぅと息を吸い込む。
「……はじめまして。オレは諸伏景光。貴方の名前を教えてくれ」
黒曜石に張られた膜がダイオードの光を反射してきらりと瞬いた。驚いたように見開かれた瞳が、やがてきゅうと心から笑うようにゆっくり弧を描いて、その拍子にぽろりと綺麗な光が溢れた。
「…………はじめまして、景光さん。私の名前は……」
了
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作者名:深海 | 作成日時:2022年9月24日 21時