スコッチと組織のヘンなヤツ (ページ38)

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三十六ページ38

「スコッチ・ソーダって、結局はハイボールなんですよね。でもハイボールって呼ぶよりスコッチ・ソーダって呼んだ方がなんだか良く聞こえませんか？」

「…………は？」

「『は？』とは辛辣な。だって海外ではウィスキーのソーダ割りのことをハイボールってあまり言いませんし、スコッチ・ソーダの方がハイボールより文字数が多いんですよ。二文字も」

「え、いや、……え？いやまてまてまてまて」

「ほら、文字数が多い方が魔法の呪文詠唱みたいで格好いいじゃないですか。貴方だって一度は右目に邪神を宿らせたり左腕に封印した悪魔を暴走させたりしたでしょう？私はしなかったですが。まあその時の感覚を取り戻してくださいほらほら。……ね？格好いいでしょう」

「まって、お願いだから、ちょっとでいいからまってくれ」

「何を待つ必要があるんですか。もしかしてまだ納得してくれてないんです？格好いいか格好よくないか、話はそれだけでしょう」

「それだけな訳ないだろう！？」

「なんですその家に帰ったら幽霊を見かけたみたいな顔。真っ青じゃないですか」

「そりゃあそうだろう！どうして、貴方が、ここにいるんだ……？」

「どうしても何も、ここは私の家ですもん」

「そうじゃなくてだ！！

貴方は、オレの目の前で死んだはずだろう……？」

震える声でそう言えば彼は、悪戯が成功した子供みたいな、それでいてバツが悪そうな笑顔を浮かべて、視線をオレからそっと外した。
彼に向かって手を伸ばしてもその手は奥にすり抜けることもなかった。左胸の位置に手を置けばちゃんと、どくんどくんと緩やかな響きが伝わる。

ちゃんと説明してくれと言えば目線を外したまま、ぽつりぽつりと口を開き出した。