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「次はどうなさります?」

「……あーそれじゃあ、貴方のオススメで」

「畏まりました」

甘い酒は飲めますか。その問いに黙って頷けば、コトリ、スリーピースシェーカーを置く音。彼は冷蔵庫からライムと、奥の棚からテキーラやキュラソーを取り出す。流れるような所作をじっと見てると、彼は少しくすぐったそうに笑った。オレは結構、人の動作を眺めるのが好きだった。

「これは……フローズンマルガリータか?」

「ええ。よくご存知で」

「ああ……」

フローズンマルガリータ。
甘く爽やかな味が特徴的な、テキーラベースのカクテル。そしてそのカクテル言葉は、

「元気を出して、だっけか」

「……よくご存知で」

どうぞ、と出来上がったカクテルを、彼はすっと差し出した。

「こういうことはあまり良くないのでしょうけれど。貴方がそんな思い詰めた顔をするのを見るのは初めてですから、驚いたんです」

話すのも初めての相手にこんなこと、変かもしれませんが、と。

「…………貴方が今何で苦しんでいるのか分かりませんし、気負うなとも言いません。が、酒の飲み過ぎは体を壊してしまいます」

一口つけたカクテルは、少し優しい味がした。

「………ああ、ありがとう。美味しいな」

「ええ、特別に魔法をかけましたので」

「魔法?」

実は私、魔法使いなんです。
なんだそれ、と笑った。




ピアノの演奏者が来たのでレコードが止まってしばらく。重厚感のあるドアが開く音がして、このバーに他の人が来てしまって、二人きりの静かな空間でなくなってしまったことにガッカリした。

というのが、オレと彼の最初の思い出だ。

このちょっとした関係は、この後もずるずる続くことになる。

四→←二



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作者名:深海 | 作成日時:2022年9月24日 21時

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