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十八 ページ18

「なぜ、私が敵じゃないと思うんです?」

「なぁ、オレはどのくらいの間気を失っていたんだ?」

「…………三日ほどです。健康的な成人男性なら一日だけの効果のはずだったんですが」

「オレのことを全力で避けてくるどっかの誰かさんに会おうと頑張ってたせいで、睡眠とかいろいろ疎かになってたからなぁ」

「質問に答えてください」

「はいはい。なぁビターズ、貴方は裏切り者を発見した組織の幹部が真っ先に取るべき行動とは何だと思う?」


ぐしゃ、と下手くそに彼が笑った。


「答えは組織に報告し、即座に始末することだ。それなのにビターズはそれをせず、あまつさえ三日も裏切り者を匿っている。それは組織にデメリットしかない行動だ。……そうだろ?」

ビターズは俯いて何も答えない。


「それに貴方は……バーテンさんは、あの日オレに言葉をかけてくれた」


オレが初めて、自分の手で人を殺した日。
未だに残る感覚を忘れようと酒を飲んだとき、彼は不器用ながらにも慰めようとしてくれた。

「うまく言えないんだけど……そんな優しくて不器用な人がオレのことを助けようとしてくれているんだ。そんな人に敵だなんて言えないよ」

そう言えば彼の目が潤み出す。それを誤魔化すみたいに下手くそに笑った彼は、オレをベッドの方へ押しやって、それから覆いかぶさってきた。


「……私には、人を殺した罪に怯えるという感情が分かりません。私にとってソレは、小さな頃からの『当たり前』でしたから」

叱られた小さな子供が言い訳しているみたいな声色で彼が言う。オレの青いパーカーをかすかに震える手で剥いでいる姿を見てなんとなく、この男はオレに断罪されたがっているんだなと思った。

オレの黒いインナーの胸元をぐしゃりと握りしめて俯いて、彼は言葉を続ける。

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作者名:深海 | 作成日時:2022年9月24日 21時

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