スコッチと組織のヘンなヤツ (ページ11)

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十一ページ11

「…………失礼、ビターズとはどなたでしょうか？」

バーボンのコードネームを貰った安室が、おずおずとジンに聞く。

「俺が組織に入る前から、この組織に貢献してきたお方だ。俺にジンというコードネームを下さった人でもある」

「マ、組織の古株よ。私よりは経歴が短いけれど……。ねぇバーボン、情報屋の貴方は『組織の拷問官』の存在を聞いたことがないかしら？」

「……確か、吐かせられなかった情報はない拷問のスペシャリストであり、人を人とも思わない残虐性とその美しい顔立ちから、人嫌いの神様とも呼ばれていたような……まさか、」

バーボンがそう言った途端、バーテンさんが鉄仮面みたいな表情を崩してぐしゃりと笑った。いや、歪められた。何かを嫌悪するような、もしくは今にも泣き出しそうな……。

ベルモットが、馬鹿馬鹿しいと言いたげに口を開けて笑った。真っ赤なルージュを引いた唇が吊り上がる。

「神様ですって！？ビターズ、貴方まだ言われてるわよ。神なんていないと確信している貴方が、神と呼ばれるだなんて。可哀想に、とんだ皮肉だわ」

ねぇビターズ？そう言って彼女は美しい金髪を揺らして、バーテンさんの方を向いた。

「は…………？」

ビターズと呼ばれた彼はスツールから降りて、俯いたままオレ達の前にやってくる。ゆっくりと顔を上げて目に映ったのは、さっき見せたぐちゃぐちゃの表情でなく、いつもの飄々とした、嘘くさい笑顔だった。

「はじめましてライ、バーボン……スコッチ。私はビターズ。これから、よろしくね」

❇︎

「スコッチ。……ビターズを、知っていたんですか？」

恐ろしく長く感じられた時間も終わってライとも別れた後、オレはバーボンと外にいた。もう充分だろうと体につけられた盗聴器や発信機を外しながら何故そう思ったのかと聞けば、彼がビターズだと名乗ったときに酷く狼狽していたから、と言う。純粋に凄いな、と思った。

「いや、知らなかったよ。彼のことは知っていたけれど、彼がビターズだというのは知らなかった」

ビターズは、オレが前にお前に話したバーテンさんなんだと言えば、バーボンは驚いた顔をする。苦笑しながら彼の顔を見て、オレはバーテンさんののことを何もしらないんだなと思った。