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まつおくん ページ7

自習中、とんとんと後ろから肩を叩かれた。
くるりと後ろを向けば、にこにこ笑顔の松尾くんがいてん?と言うと耳元で暇やな、って。


確かに自習の時間やから真面目にしてへん人も少なくない。

「数学潰れて良かったわ、俺めっちゃ苦手やねん!」
「…松尾くんそんな苦手やった?」
「俺やばいねん文系やから、全然わからん。こないだも点数めっちゃ低くてカイに教えてもろた!」


上の学年の小笠原先輩はいつも学年順位で1位を取る位頭がいい先輩。
顔ももちろん男前やから類は友を呼ぶってほんまやねんな〜って思う。


「A?」
「あ、なに?」
「いやぼーっとしてたし。」
「や、男前って得やねんなと思って、」


こてっと首をかしげてこっちを見つめてくる彼の顔は整いすぎてるほど整ってる。
性格は申し分なく優しいし、少し天然なところまである。
ぱっちりした目元で羨ましい涙袋、鼻筋が通っててかわいいあひる口。
笑えば八重歯も出て、目の下には泣きボクロまである女子の欲しいものが全部詰め込まれた顔。おまけに歌までうまい。

しかもめっちゃ顔ちっこいし。なんなん。


「ほんま、羨ましいわ松尾くん」
「そこまで褒めて貰えたら嬉しいわ〜」


机の上に広げてた古典のプリントもそっちのけで松尾くんとおしゃべりをする。

「なあ松尾くん彼女おらんの?」
「おらんおらん!Aは?」
「おったら自慢するわ」


せやんな〜なんて言いながら笑うからしばいたろか言うたら冗談やん〜ってさっきよりご機嫌。


「男前がええなあ、身長高くて男前で歌上手い人」
「Aって理想高いな」
「理想やもん。高くてなんぼやん」


え〜って言いながらそんな人俺一人しか知らんわ〜って言って前のめりで机に頬杖をつく。


「そんなんおるん?いや、どうせ彼女おる。」
「おらんで?」
「紹介して!!」
「ええよ?」


携帯を取り出してQRコードを読み取れば表示される
"松尾 太陽" の名前。


「俺くらいええ物件もないと思うで?一途やし」
「は…?」

余裕そうな微笑みは、いつもの松尾くんと違うくて戸惑ってしまう。


「俺ずーっとAの事好きやったし、身長高いやろ?Aが言うてくれたんやったら男前で歌上手い。理想ぴったりやん」
「え、あ、うん」


「…俺にしーや?」



意地悪そうな微笑みは、純白の王子か、小悪魔か。

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作者名:逢琉 | 作成日時:2018年2月5日 14時

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