ふくだくん ページ21
バイト先に入ってきた福田くんは、明るくていいこ。
パートさんにも気に入られてこないだ店のパンを差し入れされてたり、お客さんの女の子にはちょこちょこ手紙を貰ったり。
誰にも分け隔てなく接してる。
｢おはよう福田くん、｣
｢…あ、おはようございます、、｣
わたし以外には。なんでかなあ、わたし何にもしてないんだけど福田くんには何故か嫌われてるようで話しかけてもあ、いや、って言われたり。
おはようと言えばぼそぼそと言いながらロッカールームを出ていく。
｢わたしなんかしちゃったかな〜、｣
今日入れば、卒論で少しお休みを頂くことになるから福田くんとまた距離が空いちゃうな、なんて思いながらレジへ向かった。
パン屋さんとはまあお昼時にはむちゃくちゃ葛藤するもののお腹がすけば食べたくなるのも最初だけ。
いつまでもあるパンを永遠と見続けることになり、それはそれで日常的にパンを食べたいと思うことがなくなった。
夕方の時間になると客足はちらほらになっていき、夜になればほとんど入ってこない。
締め作業を終えてロッカールームへ着替えに戻るとぽつんと残ってる福田くん。
｢わ、びっくりした。｣
｢…あ、ごめんなさい｣
｢謝らなくていいよ〜急に入ってごめんね｣
エプロンを脱いで洗おうと畳んでカバンに突っ込むと、福田くんから話しかけられる。
｢みょうじさん｣
｢え？｣
｢…これ、｣
渡されたのは人気だという紅茶店の茶葉が包まれた紙袋。
｢え、え？これ？わたしに？｣
こくこくと頷いて卒論、応援してるんで、終わったらデートしてください、とぎりぎり聞き取れる範囲の声量で呟いたあと慌ただしくロッカールームを出ていった。
｢…えっと、｣
どうやら嫌われてはなかったみたいで、紙袋の中には手紙が入っていて中身は応援してます！みたいなメッセージではなく、美味しい飲み方、みたいなメモが添えられていた。
｢これは、卒論本気のやつかな〜、｣
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作者名：逢琉 | 作成日時：2018年2月5日 14時
