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おがさわらくん ページ17

いまわたしは、全力で走っている。憧れだった小笠原くんからメッセージが届いていたのに気づいたのはつい先ほどで、それはもう2時間も経っている。

卒業式が終わって、みんなでプリクラやらたくさん撮ってた時にメッセージが届いていたのに気付かず学校の屋上で待ってる、と画面に映された文字を見て走り出した。


たんたん、と軽快な音とは裏腹に日頃の運動不足で訛った足がじわじわと疲労を溜めていく。


「っはあ、は、っうぅう、やっば、、」

それでも、急げ急げ。私の足!!


がちゃっとドアを開ければ、さらりと黒髪をなびかせた彼はそこにいて。


「おがさ、わらく、ん、ごめ、」
「…そんな急いでくれたの?」


爽やかに微笑む彼はこっちへ向かってきてくれる。
彼の鼻は赤く染まっていて、ずっと待っていてくれたことを物語っている。


「さむかったよねっ?ごめん、」
「ううん、待ってる間楽しくて」


未だ整わない息をゆっくり吸ったり吐いたりしながら、彼を見つめる。


「中庭で、Aちゃんと一緒に美術で絵かいたな、とか校舎のあの廊下で俺のシャーペン拾ってくれたな、とか考えてたらあっという間で、だから待ってないよ。俺が勝手に待ってたの」


さらりとそんなことを言えてしまう彼の第二ボタンはなくて、なんなら全部のボタンですらも無くて上に羽織られたパーカーの胸元が皺になってるのはもみ合ったんだろうか。


「…小笠原くん、!!」
「ん?」
「、なんでも、いいから、ぼたんください。」


呼び出された側が言う言葉ではない。でもわたしだって彼を好きだった。
その証くらい貰ってもいいじゃないか。


「…ん、」

手を握られて、わたしの手のひらに転がったのは無いはずの学ランのボタンで。


「え、これ、」
「俺だって第二ボタンくらい好きな人に渡したいよ?」


さあっと冷たい風が吹いて、汗ばんだ身体にひやりとさらされる。


「Aちゃん、俺のこと、好き?」



そう言ってくる小笠原くんは、意地悪で素敵で、わたしは好き、としか答えられない。

ふなつくん→←よしのくん



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作者名:逢琉 | 作成日時:2018年2月5日 14時

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