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「馬鹿ですか」
『一言目から失礼ね！』
ルイスったら、労りの言葉もないワケ？
レディに向かって酷いわ。もっとオブラートに包んで頂戴！
やっとの思いで部屋に帰って来て、あの
ちゃんとムチ打ちの刑だって耐えたのよ？
褒めてくれてもいいじゃない！
「紅茶を掛けた時は驚いたよ。でもよく頑張ったね、ミラーナ」
『でしょ？』
「兄さん…あまりこの人を甘やかさないで下さい。はい、終わりましたよ」
『ん、ありがと』
包帯に覆われた腕を見る。
キズ、残らないといいんだけど…。
ペシッ
『いったぁ…！何で叩くのよ！コッチは怪我人よ！？』
「そうですね、ならその痛みをしっかり記憶して下さい。覚えるのは得意でしょう？次こんな事があれば容赦しません。仮にも女性なんですから気をつけて下さいね」
『ちょっとルイス？仮にもってどういう意味よ』
いつになく真剣な面持ちね。
私を思っての言葉なんでしょうけど、後悔はしてないわ！
いつまでも大人しい畜生でいるつもりはないし、私は待てが得意じゃないの。主人の横暴さに我慢出来ずに噛み付くだけの度胸はあるわ。
『ほら私、勇猛だから』
「獰猛の間違いだろう」
確かに噛み付くって表現したけれども！
アンタも充分人の事言えないわよ。
「そんなところも君らしくて好ましい」
『あ…あっそ！』
「真っ赤だね」
『うっさい…』
コイツ、弟に聞こえないよう上手に囁いてる…器用なことするわ。
よく恥ずかしげもなく言えるわね。
「君に振り向いてもらう為なら、何だってするよ」
『…余裕そうね』
「さてどうだろう」
楽しそうな笑みなんか浮かべちゃって。こういうときだけ年相応な顔をするんだから…！
私は、ワガママで欲張りでせっかちな子ども。
好きになってもらっても、いずれ飽きられるのがオチよ。…可愛げもないし。
アンタはただの友人。家族でも恋人でも愛人でもない、それだけの関係。
『さて、私はそろそろ仕事に戻るけど、2人はちゃんと休むのよ！本来アンタ達はこの家の子息であって、使用人じゃないんだから』
懐からリップスティックを取り出し、ササッと塗る。
『どう？似合ってる？』
「当然素敵だよ」
あら本当？
ならばよろしい、これで準備OK！
ドアを開けて廊下に出る。
振り返れば、ルビーの瞳が優しく煌めいていた。
『じゃあね』
「また」
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作者名：シェリム | 作成日時：2018年12月24日 20時
