1.BEGINNING GLOW ページ2
1866年イギリス、ロンドン郊外。
『ねえ、用事は済んだ？』
腕に抱えた花束から視線を外し、私はブロンドヘアの少年に声をかけた。細い背中が振り返り、ピジョンブラッドの美しい瞳と目が合う。
「勿論だよ。ミラーナ」
『そ。ところで、また何か首突っ込んだの？ツイストとか聞こえたけど』
彼は薄い唇を柔く上げた。
肯定するのね。
ご自慢の知識を披露するのは勝手だけれど、あの人達にバレたらまた痛い目に合うわよ！
「心配？」
『まさか！』
「そう、残念」
つまらなそうなカオしちゃって。何がそんなに不満なワケ。
…というか、さっきからずっと私を見てるけれど、どうかした？
「ルージュ、いつの間につけたんだい？」
あら、気づいてたのね。
『化粧品店のショーウィンドーを眺めてたら、店の方がお試しさせてくれたのよ』
ふふ。美人さんだから特別にねって！
アンタの目に似た、鮮やかな色を選んだの。綺麗でしょ。
…は？「寄り道していたのを知られたらお叱りを受けるね」ですって？
ふん、その時はアンタも道連れよ！
それにしても、グロスを塗り過ぎたせいかすごくベタベタする…あ、そうだ。
『口紅、
「それはまた今度」
小さく呟いたつもりが、バッチリ聞こえていたらしい。クスリと笑みを溢した彼。その金髪から少しだけ覗く耳は、うっすら赤く染まっているように見える。
「ミラーナ、そういう事は僕以外には言わないように」
『……ええ、そうするわ』
「約束だよ」
まあ、脅しているのに何て清々しい笑みですこと！ウブな感じはどこに消えたのよ！
『アンタ、本当に私のこと好きよね…』
「惚れさせたのは君だろう」
さあ、何のことだか！
言いたいことはあるけれど、今は口を噤みましょう。
なんだか花まで萎れてきた気がするわ…って、あの馬車は…。
馬車の窓から見えるあの方を確認した瞬間、私は佇まいを正し恭しく礼をした。
「こんにちは」
アルバート様！
近くにいた市民の一人が声を掛けた。現れた彼は柔和な笑みを浮かべ対応する。
…へえ。復活祭休暇中に出る課題のために出掛けてたのね、大変そう。
「２人とも乗っていくかい？一緒に帰ろう」
彼のその一言で、私達は馬車へ
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作者名：シェリム | 作成日時：2018年12月24日 20時
