霞柱は雪柱に振り向いてもらいたい【時透無一郎】

第弐拾壱譚　霞屋敷 ページ23

『ここが、霞柱様のお屋敷・・・』


　胡蝶さんに霞屋敷に行くことに許可をもらって、すぐ出かけて夕方。

　やっぱり、柱のお屋敷は広いな・・・。

　お屋敷の前で立ち尽くしていると。


霞柱「−−あ、A！」


『・・・こんばんは、なんですかね。霞柱様』


　いきなり扉が開いて、笑顔の霞柱様が出てきた。

　うわー・・・もうすでにいやな予感がする・・・。


霞柱「で？ 僕に愛でも語りに来てくれたの？」


　今度、霞柱様を蝶屋敷に連れて行こう。


『・・・甘露寺さんに、ふろふき大根をつくってこいと言われまして』


　胡蝶さんにもぜひ行きなさいと言われたし。


霞柱「Aって料理できるの？」


　失礼な。


『蝶屋敷で、神崎さんに習いました。ある程度はできますよ』


　ふろふき大根は作ったことないけど・・・まあ大丈夫だろう。

　すると、霞柱様はなにやらにやりと笑った。




霞柱「ふーん。じゃあお泊まりだね。僕の家で」




『・・・すみません、今何と仰いましたか？』


霞柱「だって、夕ご飯作ってくれるんでしょ？ そしたらもうまわり暗いでしょ」


『だいじょうぶです。わたし、鬼殺隊の甲ですよ？』


霞柱「でも心配なの。好きな子の心配しちゃ・・・駄目？」


　と、あざとく首をかしげてくる。

　
『・・・胡蝶さんの許可もらえたら、いいですよ』


　たぶん、帰ってきなさいと言うだろう。

　そう言うと、霞柱様はうれしそうにわたしの腕を引っぱった。

　ぐいっ

　強い力で引っ張られて、思わず彼の方に倒れ込んでしまう。



霞柱「−−A、かーわい。」


　

　目を開けると、視界いっぱいに霞柱様の隊服と髪が映る。

　腰と頭に回された腕。額にこつん、と当てられたのは彼の胸。

　抱きしめられている。


『ちょっ・・・何するんですか、離してくださいっ！ 胡蝶さんに言いつけます！』


霞柱「離さないよ」


　頑張って藻掻いてみたけど、霞柱様の力が強まるだけで、びくともしない。

　しかも、耳元で囁かれて、どうにもできない。


霞柱「ほんと、どこにも行かせたくない。ずっと僕のそばにいてほしい」


『・・・っ///』


　しかも、わざと息がかかるようにしゃべるせいで、どうしても顔に熱が・・・。

　別に意識してないけど、男の人と関わったことなんてないから・・・。

　はやく離してほしい・・・。


　胡蝶さん、甘露寺さん、助けて。

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