霞柱は雪柱に振り向いてもらいたい【時透無一郎】

第九譚 ページ11

冷え冷えとした空気に、柱の皆様は凍りつき黙り込む。

　お館様は少し残念そうな顔をした。


お館様「そうかい・・・。ありがとう、A。

　 手紙を」


ひなき「はい」


　お館様の言葉にひなき様が頷く。

　そして懐から手紙を取った。


ひなき「こちらの手紙は、元柱である鱗滝左近次様から頂いたものです。

　 一部、抜粋して読み上げます。


　 −−炭治郎が鬼の妹と共にあることをどうかお許しください。

　 禰豆子は強靭な精神力で、人としての理性を保っています。

　 飢餓状態であっても人を喰わず、そのまま二年以上の歳月が経過しました。

　 にわかには信じがたい状況ですが、紛れもない事実です。

　 もし、禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎および、



　 −−鱗滝左近次、冨岡義勇が、腹を斬ってお詫びします」


　・・・。

　水柱様は間違いなく、鬼殺隊の大事な戦力だ。

　柱は、無駄な私情は挟んだりしないはず。

　そして、確か元水柱である鱗滝様も切腹すると言っている。


　となると、竈門くんの妹は、人間を喰っていない・・・？


　まだ騒ぎ出す柱の皆様を、お館様が正論で制する。

　そして、衝撃の事実を口にした。


お館様「・・・それに炭治郎は鬼舞辻と遭遇している。

　 Aもそうだよ」


柱・自分「『！？！？』」


　え、嘘。

　わたしが、あの鬼舞辻無惨と遭遇していた・・・？

　記憶がない。一ヶ月以上前の出来事なんだろう。









「お姉ちゃん・・・・・・大好き、だよ」









『柚音ーーーーーーーッッッ！！！』









胡蝶「A！」


『！』


　わたしは目を見開いた。

　眼前には、心配顔の胡蝶さんがいた。

　恋柱様と霞柱様も、心配げにわたしの顔をのぞきこむ。


恋柱「だいじょうぶ！？ 顔色が悪いわ」


霞柱「A・・・」


胡蝶「一度、奥で休んだほうがーー」


『いえ。ご心配いりません。だいじょうぶですので。

　少し取り乱してしまったようです。忘れてください』


　わたしは普段通りを装って、なんとかそう言う。

　

　さっきのは、一体・・・・・・。

　・・・落ち着け。お館様の前で、考え事をするな。

　
お館様「A。だいじょうぶかい？」


『はい。議題を続けてください』


竈門(苦しい、哀しい、辛い、不安、絶望、諦め・・・。

　 前よりも、負の感情が強い)

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