第十二話 ページ14
「キンジ、あんたあたしのドレイになりなさい！」
「…………」
「…………」
「…………」
自分の部屋に帰って、リビングの扉を開けたらルームメイトが特殊なplayに誘われていた。
どうしよう。
ひとまず、空きかけのリビングのドアを閉める。レキと顔を見合わせ、
「待ってくれ、キンジの奴授業終わって早々と帰ったと思ったら何してるんだい？というかアリアもいきなり乗り込むとかアグレッシブすぎる」
「レキ知ってます。あれどう見てもツンデレです。登場してすぐ主人公に惚れるチョロイン系のツンデレです。というかキンジさん、そこまで特殊な性癖があったんですね――やはり」
「ロリコンでドMか――残念だよ」
バーン、という音と共にドアが蹴り開けられた。
「そこはせめてまさかとでも言えよ、この外道ども……！」
息を荒くしたキンジだ。レキを庇うように前に出る。レキも僕の後ろに隠れる。
「全く、興奮しないでくれ」
「きゃー怖いですー」
「お前ら……！」
「キンジ、飲み物くらい出しなさいよ！」
リビングの中からアリアの声。
「コーヒー！ エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ！ 砂糖はカンナ！」
キンジは、もういやだこいつらという顔をしてリビングに戻っていく。
……淹れるんだ。
もくもくと湯気を上げるインスタントコーヒー。僕は紅茶、キンジは缶コーヒー派なので置いてあるだけで実際に使ったのは久しぶりな気がする。ソファに座ったアリアはそれを物珍しそうに眺め、
「これホントにコーヒー？」
などと言っている。
「……ヘンな味、ギリシャコーヒーにちょっと似てる……。ん……でもちょっと違う……」
ブツブツとつぶやきながらコーヒーを飲んでいる。
「ギリシャコーヒーって、どこのメーカーだい？」
「普通にギリシャ産ってことじゃないですか？」
「味もメーカーも産地もどうでもいい、それよりもだ」
キンジもコーヒー片手にソファに座り、
「今朝助けてくれたことには感謝してる。それにその……お前を怒らすような事を言ってしまったことは謝る」
軽くキンジが頭を下げた。……いつの間にかシリアスに。
「でもだからってなんでここに押しかけてくる？」
「分んないの？」
「分るかよ」
神崎は少し意外そうな顔をし、
「あんたならとっくの昔に分ってると思ったのに。まぁ、いいわそのうち思い当たるでしょ」
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作者名：*0608 | 作成日時：2021年11月7日 22時
