6話 ページ6
一度も見たことがない風景に頭が重くなるも、歩いて歩いて歩き続けてやっと交番の前まで辿り着いた。どうしよう、どうやって言えば信じてもらえるかな...緊張するなあ。交番に入ったのなんて小学校の頃道で鍵を拾って以来だ。
「あ、あの...」
「どうかされましたか?」
「誘拐、されまして」
「ゆ、誘拐?」
「えと、上手く逃げ出せたっていいますか、気が付いたら閉じ込められていて」
「...はあ」
案の定、何だこいつは見たいな目を向けられた。当たり前だ、私だって急にそんな事を言われたら現実と妄想の区別もつかないのかこいつはみたいな目を向けてしまうと思う。
ここは諦めてもう帰ろう。自分の家に帰れるだけでいいじゃないか...まあ、また誘拐されるかもしれない可能性がないわけじゃないけど...
と、交番を出ようとしたらもう一人警官さんが入ってきた。多分彼の先輩かな。
チラと一瞬だけ姿を確認して素通りしようとすると
「君は...っ!」
腕を勢いよく引かれて、また交番の中へ逆戻り。痛い、腕が赤くなってる。またこけるところだったじゃないか。不満げなのを隠そうともせず先輩警官に睨みをきかせる。
「先輩?」
「まさかあの人、本当に...」
「あの?」
何だこの人は、悪いことをしたら取りあえず謝るのがこの国のルールだろう。何て無礼な。
っていうか、何をさっきからブツブツ言ってるんだ?大体、何で私を交番へ引き戻したんだ。
勝手に心の中でムカついていると、突然彼が誰かに電話をかけ始めた。なにやら焦っているような、何かに恐れているような、そんな様子で。
...お、携帯しまった。ていうか、彼が電話をかけている間、私はこの場にいる必要あったのだろうか。
「あの、私そろそろ...」
「す、少し待ってくれ」
「まだ何か?」
「いや、少し、君と話をしたいと言っている人がいてね...」
「はあ...」
全く何考えてんだあの人はと面倒くさそうに溜息をつく彼。少しの間に随分疲れてしまったようだ。一体何を話していたんだろうか。
4人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜凪亜蓮 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Chihiro0521/
作成日時:2023年12月11日 19時