5話 ページ5
衝撃で逆にベッドへと逆戻りしてしまう。やっぱここを定位置にしてよかった。ちょうど良い弾力感が私を落ち着かせてくれる。
ここのドアが開いてるっていう事は、さっきのは玄関の戸締まりをする音だったのか。というかもしかして私、逃げ出せる?ここから出られる?でも、部屋で待っててって言われたし...いや、でもチャンスがある内に外に出ておかないと、彼が帰って来てから安全な保証なんてない。
それに、今私にチャンスがあるのは彼がドアの鍵を掛けるのを忘れたからであって、次も鍵が開いている可能性はきっと低い。
外に、出てみようかな。
そっとそっと、物音一つ立てないよう本当に慎重に体を動かす。
玄関までは一直線、わかりやすすぎて逆に心配になってしまう。まあ、ここから出られる事ができたらこっちのもんだ。すぐに家に帰って、いや、その前に交番に行かないと。確かにあの人は優しかったけれど、一応誘拐されたわけだし。今思えば、少し危機感がなさすぎたな。
と、ほんの数十秒考え事をしている内に玄関まで辿り着いた。あ、私の靴綺麗に揃えてくれてる。几帳面な人なんだろうか。
つま先をトントンして靴を履こうと思ったが、音を立てるのはまずいだろうと慌てて足を空中にキープする。結局バランスを崩して転倒してしまった、やめておけばよかった。
ゆっくりとドアを開ければ、強い照明が私を襲う。そういえば、ここに来てから一体何時間位経ったのだろうか。人の時間感覚というものはあまりあてにならないようだ。
エレベーターは鉢合わせたら怖いから、階段で下りようかな。
八階分も階段を下りたの、初めてかもしれない。あんまり疲れはしなかったけど、とにかく見つからないかが心配で駆け足に。一階分くらい転げ落ちてしまった。痛い。
まあいいや、取りあえず交番へ行こう。
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作者名:夜凪亜蓮 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Chihiro0521/
作成日時:2023年12月11日 19時