夕立;20 ページ32
マルコが船内を歩いているとすれ違う人物。
「マルコ、考え事か?」
「イゾウ、」
イゾウはやや間があったあと口を開く。
「Aのことを殴った野郎がまだ見つかってねぇと聞いたんだが…」
「あぁ、まだ見つかってねぇよい」
「…………すまない」
イゾウが頭を下げる。
「おいおい、なんでお前が謝るんだよい」
「……元はと言えば、俺があの時Aが怪我していることに気づいてやれば、あんなことになってねぇ。そうしたら、あいつを殴った野郎ももっと早く分かったかもしれない。……俺が」
「イゾウ」
マルコがイゾウの言葉を遮るように口を開く。
「…………Aは優しいからなぁ、イゾウが自分のことを責めんてんじゃねぇかって心配してたよい。…気づけなかったのはお前だけじゃねぇよい、俺だってAが怪我したことに気づけなかった。だから、自分だけ悪いみたいに言うな」
「…………マルコ」
「お前もなんか分かったら、教えてくれよい。Aを殴った野郎が許せねぇのは同じだろい?」
「……あぁ、俺も探ってみる。ありがとう、マルコ」
マルコはにっこりと笑う。
「後で、Aの所にでも行ってやってくれよい。会いたがってたからなァ」
『………親父も今回ばかりは放っとくわけにはいかなそうな雰囲気だったしなァ』
マルコは内心そう呟く。
Aが殴られて死ぬ寸前だったと白ひげに報告すると、やった野郎は見当がついてんのかと聞いてきた。
『いいや、まだ何とも。Aが姿を見ていない以上、確信は持てねぇよい。Aが言うにはその時女の声が聞こえたらしい』
珍しいと思った。所詮家族と言っても、もとは荒くれ者どもの集まりだ。よからぬ考えを起こすやつも中にはいる。そういう奴を親父はほっとけと言って許した。無駄な諍いを避けるためなんだろうが。
『………マルコ、この船に女はナースしかいねぇんだぞ』
『分かってるよい、けど誰であれ、俺たち家族に手ェ出したことに変わりねぇよい』
『………ガキに手ぇあげるようなやつはこの船に乗せておくわけにはいかねぇなぁ』
白ひげはそう言ってマルコを見つめた。
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玉うさぎ(プロフ) - なまらさん» コメントありがとうございます!夢主の能力が使われるのはもう少し先になりそうです……(´TωT`)気長に待っていただけると作者は嬉しいです (2021年11月22日 11時) (レス) id: 2678198c2d (このIDを非表示/違反報告)
なまら - 更新されてるか見るのが毎日の楽しみです!!夢主ちゃんの能力使われるのが楽しみです!更新頑張ってください!! (2021年11月21日 4時) (レス) id: 26945b0253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉うさぎ | 作成日時:2021年10月3日 12時