クジラの末っ子は雷雨を祈る

夕立;05 ページ17

「おーい、マルコ！、サッチ！」

エースが片手をあげて2人を呼ぶ。
あちらも気づいたようで片手をあげてきた。


「買い物は？済んだのかよい」
「あぁ、全部済んだぜ。後で船に運ぶように頼んだ」
「よかったよい。ちゃんとやれてるか心配だったからな」
「どーゆー意味だよ」


ギャーギャー言い合ってるマルコとエースを見てサッチはふと思い出した。

「あ、悪ぃエース、そういえばイゾウが呼んでたんだわ」
「うわ、マジか」
「……何だよ、またなんかしたんだろ」
どうせ提出してほしい書類やら何やらをすっぽかして来てしまったのだろう。

「Aは俺たちで見ておくから行ってこいよい」
「…………へいへい」

おとなしくエースは船の方へ戻って行った。


「さーてとAの買い物は済んだんだろ？」
サッチがにんまり笑う。
「何考えてんだよい」
「腹減らね？」
「……娼館(アレ)って言わなくってよかったよい」


いい店があるんだとマルコとサッチとAが歩いているとAが小走りで走り出す。

「おいおいA！どこ行くんだ！？」

サッチとマルコが慌てて追いかける。

「……」

追いかけた先にあったのは楽器店だった。ショーウィンドウにヴァイオリンが飾られている。

「………ヴァイオリン。どうかしたのかよい」
「……前は弾いてたから。ちょっとだけ、気になったの」
ぽつりとAはそう言った。

「そういえばAは誕生日いつだ？」
マルコの問いにAはひと月後だと答える。

「お！じゃぁちゃんと祝えるな」
サッチは嬉しそうに笑った。

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