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ばか、
…ばかね、
ほんと、ばか。
「拓也、」
そう呼んだら、なに?って、
返事が聞こえてくるみたいだった。
それくらい、この部屋には拓也との思い出が詰まりすぎている。
小さなベッドで、窮屈そうに眠る拓也が好きだった。
そろそろ寝よ。って、抱き寄せる拓也の腕が好きだった。
小さなソファで、肩を寄せ合うのが好きだった。
手の平ひとつ分だけ空いた距離も、好きだった。
『…ごめんな』
『私も、…ごめんね』
喧嘩して仲直りしたあの朝も、
『うっま!』
『でしょ。得意料理なの』
『良い嫁さんになるわー』
美味いって笑ってくれたお昼も、
『すっげー星!A、早く!』
『そんな慌てなくても星は逃げな……あ!』
『『流れ星!』』
肩を並べて見上げた夜空も、
全部、全部、隣には拓也がいた。
「…ぅわぁああああ……ッ」
ぼたぼたと、床に落ちていく涙。
その涙を拭ってくれたのも、拓也だった。
溢れて止まらない涙をそのままに、
ゆっくり、ゆっくりと頭を上げた。
風に揺れる緑色のカーテンも、
ベッドも、ソファも、テーブルも、
写真立ても、壁に掛けた時計も、本棚も、
その全てに拓也との思い出がいっぱいで、
そんな部屋に取り残されて、今でも未練がましく
拓也を待っていて、……ほんと、…ほんとに、馬鹿ね、
「ばっかみたい…」
(止まった時計を、動かそうともしない私が、)
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千花(プロフ) - ゆみさん» コメントありがとうございます♪♪これからも頑張りますね!お時間のある時にお付き合い下さい(^-^) (2018年5月2日 13時) (レス) id: 0df86c7d6a (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ(プロフ) - 更新頑張ってください。応援しています。 (2018年5月1日 9時) (レス) id: 2656059692 (このIDを非表示/違反報告)
千花(プロフ) - 凛*.さん» 読んで下さりありがとうございます!凛さんの心を動かすことが出来て嬉しいです…!一気に書き上げたので不安があったのですが、感想をいただいてホッとしました(o^^o) (2018年4月26日 13時) (レス) id: 0df86c7d6a (このIDを非表示/違反報告)
凛*.(プロフ) - コメント失礼します´`*読みながら胸がジーンとして、最後のシーンで涙が出ました( ; _ ; )繊細な表現もとっても素敵でした!!完結、お疲れ様です^^ (2018年4月25日 22時) (レス) id: da5814e32d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千花 | 作成日時:2018年4月24日 13時