その声が僕を呼んだなら

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(#62 side)









「だから大丈夫」





巨さんの気持ちも、知ってる。

けどそれを俺が言うのは違うから

こんな言い方しか出来んけど。




「Aちゃんと巨さんの方がお似合いだって」

「甲斐選手、」



にか、って笑って見せたら

それにつられるようにAちゃんも

笑ってくれたから、ほっとした。





「それにしても、」



俺、ずーっと気になってた事があるんだよね。と、

続けたら、Aちゃんが小首を傾げた。





「何で巨さん、なの？」

「え？」

「呼び方」



巨さんは、二人で出掛けた日から呼び捨てなのに。

そう続けてAちゃんを見たら、ほんのりと

頬が赤くなってる。仕事中には見せない表情が、

可愛いなぁって思ってしまった。




「何かその…恥ずかしくて」

「でも二人って同い年でしょ？」

「…やっぱり、変？」

「うん」




素直にそう返事をしたら、隣のAちゃんが

がくりと肩を落としたのが分かった。

その反応が面白くて、ははって笑ったら

笑わないでよ、って力のない声がする。




「巨くんって呼んだらいいのに」

「それはそうなんだけど、」

「それか巨」

「呼び捨てはハードル高すぎるよ…」




…あ。いつの間にか、タメ口になってる。

それが嬉しくて、口元が緩む。

あーあ。もうほんっとに焦れったい二人だなぁ。

まぁでもそれを見てるのも、楽しいけど。




「巨くん」

「……なお、くん」

「って呼んだら、巨さん喜ぶよ絶対」





だから頑張れ。って、Aちゃんの頭に

手を伸ばして、ぽんぽん。って撫でてあげた。

仕事をしてる時のAちゃんはきりっとして

格好良いけど、そうじゃない時のAちゃんは

やっぱり、可愛い。巨さんが好きになるのも、

分かる気がした。









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