お義兄さん、構わないでいいです【紫】

27 ページ28

ななもり。side

『わた、しが…うまく、しゃ、べれな、いの、は……いた、いから、なの』


Aが頑張りたいと言った直後に教えてくれたこと
もともと無口で話すことが減って、言葉がつっかえやすくなったのも事実らしいが

一番の理由は激痛だったらしい

そして、ずっと言わないように
あんなんでも母親だからと守ってきたことを

Aは言った

自分を自由にしたというのが正しいのかもしれない


『お兄ちゃん…』


まだなれない
スラスラとAが喋っていることが

でも、嬉しいことに変わりはない


な「どうしたの？」
『わたし…あんまり冷静に考えれてなかったことに今気がついたんだけど』
な「うんうん」
『お義父さんとお母さんが離婚したら…私、どうなるんだろう…
お義父さんとは養子縁組してないから…』


それだと場合によっては引き取れないかもしれない可能性を危惧しているのか
まぁ、そうだとしても実のお父さんが引き取ると思うけど


な「大丈夫だよ」
『え？』
な「実は俺、お父さんにたのんでまぁまぁ前にこっそり養子縁組しといてもらったから」
『そ、そうなの？』
な「そうだよ」
『あ、じゃあ…大丈夫…なの、かな？』
な「多分大丈夫だよ」


安心したような顔をするA

こんなに表情豊かな子だったんだ
もっと早く知れたら良かった


『あの、手伝ってもらったりしたのに…申し訳ないんだけど…』
な「うんうん」
『やっぱり…男の人は…まだ、怖いから…』
な「いいよ、焦らなくて」
『うん』
な「一緒に頑張ろ」


俺たちの最小距離は2m

これから少しずつ短くなっていけばいいな

28→←26

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す