この恋、絶対炎上不可避【赤】 (ページ8)

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Aside

昔から、私に向けられる褒め言葉は

“美人だね”
“綺麗だね”

この2つだった

知的な印象と、大人びた雰囲気を醸し出す目

色白な肌

サラサラの黒髪

高い位置でくびれたウエスト

誰もが私を羨んだ

“いいなぁ…人生困らないでしょ”

そう言われながら生きて来た

困らない…そんなわけ無いだろ

顔のせいでいつも避けられた

“申し訳ないけど…隣歩きたくないよね”
“なんか…比べられそうだし”

勝手な印象を持たれるせいで、好きなものを好きと言えなかった

“あっ、Aさんはこうゆうの興味ないよね”
“ごめんね、興味ないような物の話ばっかりしちゃって”

勝手に期待されて、勝手に絶望された

“日和さん…思ったほどは成績良くないのね”
“真面目そうだと思ってたんだけど…”

好きでこの顔に生まれたわけでも
好きでこの体に生まれたわけでもない

誰もが羨むものを持ってるからって
それが幸せというわけではない

綺麗で居なければならないという義務感
期待を裏切ってはならないという責任感

これらに押しつぶされそうになったこともないくせに

偉そうなこと言わないでよ
羨ましいとか言わないでよ

芸能界に誘われた時

もしかしたら、ありのままの私でいいと思ってもらえるかもしれないと期待した

でも、ダメだった

“その顔でぬいぐるみが好きっていうのはね…”

“日和って名字は、貴方の顔には合わないわ…百合川にしましょう”

“あくまで、清楚で綺麗な少女なんだよ……高嶺の花であるべきなんだ”

“料理番組なんて出なくていいわ、そんな庶民的な百合川Aは誰も求めてないもの”

“好きなことは、ピアノと読書って言うのよ？アニメ鑑賞なんていっちゃダメ”

“駄目だ、この仕事は断りなさい……百合川Aのキャラにあった役じゃない”

誰が私を見てくれるの？

日和Aは必要ないの？

皆が求めてるのは、百合川Aだけ？

誰が私を見つけてくれる？

誰が日和Aを好きになってくれる？

いつまで百合川Aを演じればいい？

いつまで日和Aを殺せばいい？

「これ、莉犬さんからよ」

姉に渡されたメモ用紙

書かれていたのは連絡先と少しの言葉

日和Aちゃん！

ホントはダメだけど、特別だからね！
俺の連絡先、いらなかったら捨てていいから

なんだ

居たんだ

日和Aでいいって言ってくれる人

私でいいって、思ってくれる人