・× GD ページ10
Aがあまりにも俺のこと見るから
穴あくってまじで。
Aがどんな顔をして俺のこと見てるか少しだけ気になるけれど。
またあの笑顔を見るのが少し恐くて、Aの顔を見れずにいる。
あの時の心臓が跳ねるような感覚。
あの瞬間、Aの笑顔を見てから、Aのことを容易く見れなくなったんだ。
その感覚を繰り返したら、俺が俺でいられなくなりそうだから。
「あはは、ごめんなさい。ジヨン様はおもしろいですね。」
ん？穴があくって言ったことがか？
「感謝の気持ちがあるのは、素敵なことだと思います。
ジヨン様がご家族を大切にしているのがすごく伝わりました。これからも変わらずご家族を大事にしてください。」
あ、ほら、まただ。
また悲しそうな声をした。
そんなこと顔を見なくたってわかる。
「Aは？」
俺のことばかり話すのはフェアじゃないから。
「え？」
「Aの家族はどんな人たち？兄弟はいんの？」
「…えぇっと…」
…
明るい声で何かAからアンサーが返ってくるであろうと思っていたのに。
Aからは、声さえも聞こえなくなってしまった。
耳に頼っていた俺が使えるものっていったら、もう目しかないわけで。
気になって横目でAを見たら、話すときはいつも俺の方を見るのに、俺の方を見ていない。
あったのは悲しそうな少し俯いた横顔。
「A？どうした？」
たまらずAの方を見て問いかける。
「…ジヨン様は意地悪ですね。」
今にも泣き出しそうな声を発してパッと顔をあげて…。
そんな悲しそうな顔で笑うなよ。
悲しそうな笑顔を見せると思ってなかった俺の心臓は、別の意味で跳ね上がる。
ドキドキではなく、なんだこれ、ズキズキ…？
「わたしが、家族のことを話せるようになるのは、まだ時間がかかります。」
「え？」
「今は無理だけど、いつか…聞いてくれたら嬉しいです。」
ここが信号待ちの車の中じゃなかったら、Aを抱き締めていたに違いない。
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作者名：ゆん
x他1人 | 作成日時：2014年8月16日 20時
