◯Again ページ5
結局最後の最後までジヨンさんは笑わなかった。
それどころか途中からわたしの方まで見なくなって…
わたし、何かしたかなぁ。
それとも、元々ああいう人なんだろうか。
でも。
あんな寂しそうな目をした人久しぶりに見た。
まるで捨てられた子犬のような。
気付いてほしいのに気付かれたくなくてもがいてるみたいな…うまく表現できないけど…。
また来てくれたら今度こそ。
そう意気込んでみるけれど、来ることなんて滅多にないだろうな…
ジヨンさんは音楽を楽しむDJさんが居てノリが良いクラブにはよく行くみたいだけど、こういう所には縁遠いかもしれない。
…
ジヨンさんがお店に来てから1週間ほど経った。
ジヨンさんはもちろんお店に来ることはなかった。
『Aお疲れ様。今日も忙しかったわね。』
ママがわたしの肩にポンッと手を置いて労いの言葉をかけてくれた。
時計を見ると深夜1時前…
「お疲れ様でした。」
『A今日お客様に飲まされすぎてなかった？大丈夫？』
うーん。確かに…
いつもよりは飲んだ気がする。
「大丈夫ですよ。ちょっとお酒いただきすぎちゃったけど意識はハッキリしてますから。」
『そう？なら良いんだけど…』
「ふふふ、ありがとうございます。」
『気をつけてね。』
「はい、ママも。」
少しだけフラつく足取りでお店を出た。
いつもなら客を乗せようとウロウロしているタクシーもさすがは金曜日。
そんな簡単にはつかまらないか…
あんまり遠くないし歩いて帰るしかないかな。
酔い覚ましにちょうどいいかも。
歩いてるとビルの上の大きな看板にG-DRAGON。
こんなのあったんだ。いつも気付かなかった。
立ち止まってビルの上を見上げる。
「やっぱり綺麗な顔だなぁ。」
そう呟くと横を通る人に怪訝な顔をされた。
ジヨンさん、今笑ってるかな？
ちゃんと心から笑えてる？
誰か寄り添ってくれる人は側にいるのかな？
「あー…やっぱり飲みすぎちゃったかも。」
再度そんな独り言を呟いてコートの襟を立てる。
随分寒くなったなぁ…
もう季節は冬だ。
外は、息が白くなるほど寒い。
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作者名：ゆん
x他1人 | 作成日時：2014年8月16日 20時
