・× GD ページ12
まじか。まじでまじか。
Aとマンションが同じだったなんて、全然知らなかった。
ここに住んで1年くらい経つけど、Aと顔を合わせたことなんて1度もない…と思う。
1回見たらたぶん忘れないと思うし。
あ、いや、というより、俺の仕事が不規則すぎてここの住人と顔合わせることなんてないもんな。
だから逢ったことないのかも。
「Aは何階なの？」
エレベーターに乗り、階数ボタンを押そうと思って聞いた。
「あ、わたしも最上階です。」
って…
は？
階数まで一緒かよ！
決してここは安いマンションではない。
最上階に至っては4部屋しかないくらい。
それだけAは稼いでるってことか…
いや、もともと金持ちのお嬢様か？
あ、でも金持ちのお嬢様ならホステスなんてやらないか。
さっき家族の話するの避けたしな…
「こんな偶然ってあるんですね。
以前、芸能人の方が住んでるとは聞いたことあったんですけど、まさかジヨン様だったなんて…びっくりしたぁ。」
びっくりしたのは俺の方だよ！
あーあ。
知り合いが居ると思うと、女連れ込み辛くなるじゃん。
鉢合わせになったら気まずいし。
ん？
知り合い？
待て待て。
たかがクラブのホステスの1人だろ。
知り合いなんてほどでもないか。
別に鉢合わせしたところで、困ることなんて一つもない。
「でも同じマンションの芸能人の方がジヨン様でわたしはとても嬉しいですよ。
他の人だったら、もっと…なんていうか、落ち着かないから。」
しまった。…
油断してAの顔をこんなに明るいところでまじまじと見てしまった。
「嬉しいですよ。」ってそんなフルな笑顔で言われて、俺の心臓の鼓動が早くなったのは言うまでもない。
「…笑うの反則。」
Aから目をそらして小さい声で呟いた。
「え？なんですか？」
「絶対教えてやんねーよ。」
「それ、余計に気になります。」
「気にすんな。」
「ますます気になります。」
「他の人だったら落ち着かないって、俺が庶民的ってこと？」
ポケットからわざとスマホを取り出していじるフリ。Aの方を見ないように。
「まさか。そういう意味ではないですよ。笑」
「じゃあどういう意味？」
「理由はないけど、安心しますって意味…かな。」
「…なんだそれ。意味わかんねぇ。」
タイミングよくエレベーターが止まってくれて一安心。
ドキッとしてスマホを落としそうになったなんて、俺らしくない。
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作者名：ゆん
x他1人 | 作成日時：2014年8月16日 20時
