◯Accidental ページ11
家族の話題を振ってしまったのはわたしだけど…。
聞くんじゃなかった。
ジヨンさんの質問に答えなかったのは聞かれたことが嫌だったんじゃなくて、この場が変な雰囲気になるのが嫌だったから。
わたしは決して家族には恵まれていない。
家族のことをとても大事にしているジヨンさんには、なんとなく話しづらい。
きっと悲しそうな顔をしてしまうに決まってるんだ。ジヨンさんは優しい人だから。
それに、変に同情もされたくない。
可哀想なやつだって思われたくないし。
「あ、ジヨン様、そこの突き当たり左です。」
「了解。」
良かった。
道案内だとしても話すことがあって。
ジヨンさんはほんとに会話のキャッチボールが難しい人。
わたしがさっき微妙な反応をしたからなのか、ジヨンさんは話すのをやめた。
きっと、わたしのせいだよね。これ。
せっかくさっきこっち見てくれたのに、もう目線はずっと前を向いたまま。
それがすごく悲しいのは、なんでだろう。
「あ、そこのマンションです。」
「え？そこ？」
「え？そこです。」
な、なんだろ？
なんでこんなに驚かれるの？
マンションの前に車を止めてくれたから、シートベルトを外そうと手をかけた。
「…まじか…」
「え？」
ジヨンさんは唖然とわたしが住んでいるマンションを見上げてる。
「Aのマンション、ほんとにここ？」
さっきからそう言ってるのに！
なんかやっぱり驚いてる？よね…？
えぇっと…何をそんなに驚くの？
「ほんとにここですよ？」
ジヨンさんは少しだけ口を開けてぽかーんとしていて。
かと思えば、ハンドルに突っ伏してみたり…
「ジヨン様？どうかしました？」
もしかして元カノの家とか？
そんなこと恐ろしくて聞けないや。
「ジヨン様？」
はぁ…っと1つため息を吐いたジヨンさんは、ハンドルから顔を上げてわたしの方に顔を向けた。
「あのさ…」
「はい？」
「…俺の、マンションもここなんだけど。」
は？
「ここの最上階。」
左手の人差し指を1本立たせて上に差しながら、ジヨンは少しだけ気まずそうに笑った。
わたしとジヨンさんが同じマンション！？
それは全然知らなかった。
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作者名：ゆん
x他1人 | 作成日時：2014年8月16日 20時
