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耳元で囁いてから、ゆっくりと司書室の扉を閉めた。そうしたら、扉の向こう側から、物音が聞こえてしまって、俺は驚いて肩を震わせた。でも、何も言わなかったから、俺も、何も言わずに、そのまま帰って、布団に潜り込んだ。次の新作は、音楽活動をする学生をテーマにしようかな、なんて、俺は毛布の中で考えながら、眠った。頭の中には、ずっと、ギターの音が鳴っていたような気がした。
翌日の朝。俺は普段より少しだけ目覚めが良かった。ギターの音は、何故かもう頭の中から消えていた。人というのは、直ぐに事を忘れてしまうものだ、何故か、悲しくなった。その後、服を着て、歯を磨き、顔を洗い、一つ結びにした髪を前に出してやれば、格好良い俺が鏡の前に居た。いつも通りの俺。昨日と同じ俺だ。部屋を出て、芥川先生の本を読み返そう、と図書室に向かっていると、なにやら司書室から、焦り声が耳に入って来た。と言っても、昨日聞いた彼の声では無く、地味な声であった。

「司書さん待って吐かないで!せめてゴミ袋の中に!」

どうやら昨日の酔いがまだ覚めていないようだった。おそらくこの声は、秘書である徳田秋声の声だ。悪いことをしたな、と思って、そそくさと部屋の前から離れた。
図書室についてみると、見覚えのある背中を発見して、話しかけよう、と背中をトントン触ってみる。その人はすぐに振り向いてくれて、俺を見ると、驚いたような顔をした。

「おや、早起きだね、太宰君」

「は、はい!おはようございます、芥川先生っ!」

「うん、おはよう」

芥川先生は、くすりと微笑んでくれる。嗚呼、なんて綺麗なお顔……!そのミステリアスな雰囲気も素敵だ、最高過ぎる!朝から会えるなんてっ!

「これも、司書のおかげか〜ッ!?」

「司書さんのおかげ、って?」

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作者名:べーこんむしゃむしゃくん | 作成日時:2022年11月22日 13時

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