続 ページ15
まあ、そう言うと思った。彼は音樂以外のものに興味が無いらしいから、学校の教科書かなにかに出てこない限り、一生触れることは無いのだろう。音樂と文學は、それこそ隣合わせの存在なのに……
「ふーん。時間あったら読めよ、みんな面白いの書いてるぞ？」
「そんな暇あったら、ギターに触ってるよ」
「だよなー」
そんなふうに駄弁っていると、バーへの入口が見えてきた。お洒落な看板がぶら下がっている。幸い、まだ営業中だ。まあ、この店は朝日が昇るまでは営業しているし、この時間で閉まることはまず無い。シックな焦茶色の扉についた、金色のドアノブを回して、力を込めて前に押し、扉を開ける。カランコロン、と軽快な音が鳴る。
「お、やっと来たか！」
「こっちやで、ダザイくん」
声が聞こえた方へ、数歩ほど歩いてみれば、そこには、ほんのりと頬を赤く染めた友人たちが居た。ひとりはグラスを片手に、ひとりは煙草を片手に、ひとりは頬杖を付いて、俺たちを待っていた。
「よっ、待たせたな！特別ゲストを連れてきたぜ」
そう言って、隣に居る司書の肩を強く掴んで、3人の前に見せてみる。
「えっ、あ、新しい司書！？」
「太宰、いつの間にそんな親密な関係に……」
「ま、まさかお司書はんと一緒に来るなんて……」
望んでいないゲストの登場に、3人は目を丸くした。これで少しは酔いも覚めるだろう、俺は後から来たんだし、一足先に酔われてしまっては困る。
司書は俺の方を向く。少し顔が赤い。照れくさいのか、恥ずかしいのか。
「も、もしかして、この人達がお……太宰先生の字書き仲間……？」
「今お前って言いかけたろ！」
「だ、だって乱暴なこと言ったらメッタメタに叩かれそう……」
「い、いやそれは……あるかも」
「ほらやっぱり！」
まあまあいいから、と無理やり司書を三人の近くのカウンター席に座らせ、お店の人にウイスキーを注文する。
「司書、何頼む？」
「え、じゃあ……グラスビールひとつ、無かったらレモンのチューハイで」
「え、酒飲めんの？」
驚いてそう聞いてみると、司書はああ、とぼんやりしたような声を出す。
「俺、若く見えるだろうけど、もう20歳だから」
「えっ……そうなの！？」
「てか、おま……太宰先生たちも大概だろ、俺にとっちゃみんな20代に見えるよ」
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作者名：べーこんむしゃむしゃくん | 作成日時：2022年11月22日 13時
