【ナンバカ】短編恋愛集16

恋人不足01　-六力大仙- ページ14

猿門｢A！でかした！｣

A｢えへへー！ありがとうございますー！｣


この度私は武闘大会で優勝した
様々なメディアでこの快挙をとり上げられ
南波刑務所の名前はさらに世に知れ渡る事となった
当然私の所属する部署の主任の鼻は高いわけでこの通り大変ご機嫌である


猿門｢よくやったなー！褒めてやるぜ！｣


主任はまるで自分の事のように喜んで私の肩を抱き頭をワシワシと撫でた


A｢もう主任ー！髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃうー！｣

猿門｢キキッ！わりいわりい！｣


髪の乱れを嫌がる素振りを見せたが私だって大変ご機嫌な訳で
あの厳しい主任がこんなにも喜んでくれている
満更でもない


猿門｢お！おめーの彼氏迎えに来たぞ！｣


主任の言葉にその視線の方へ目を向けると六力がいた
優勝してから初めて顔を合わせるのだ
この喜びを六力に伝えたい！
そして六力と分かち合いたい！


A｢六力ー！｣


私は六力に向かい全力で走った


猿門｢ちゃんと休憩時間守れよー！｣

A｢はいはーい！六力ー！｣


六力は伸ばした私の手首を掴み強く引っ張った
その感触に違和感を覚えた
私の頭の中では六力に駆け寄った私を全力で抱きしめ
いっぱいいっぱい褒めてもらうつもりだった
それなのに…

そう言えばさっき見た彼の顔は無表情だった
そこからは冷たささえ感じたくらいだ


A｢六力…？｣


私の腕を引っ張ったまま無言で廊下を進んで行く


A｢ねえ六力君、手首ちょっと痛いぞ。｣


おどけて言ってみるものの六力からの反応はない
本当は怒りたいくらい私の彼に掴まれた手首は痛かった
私は六力に何かしてしまったのだろうか
こんなに不機嫌なんてそうでなきゃ…


A｢六力もしかして嫉妬してる？｣


一瞬、六力の体がビクッとなった
そしてチラリと見えた彼の顔は下唇に強く歯を立てていた
そうだ…
六力は嫉妬しているんだ…


六力｢そうだよ…。｣


ぽつりと呟いた
その声の無機質さに私の胸は押しつぶされた


A｢酷いよ…。｣


だって六力が1番知ってるはずじゃない
いつだってこんなにそばで私を見ていてくれていたじゃない
私がどれだけ頑張っていたか知ってるでしょ？

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