:39 _TH ページ39
.
「もしもし、ジョングク? 」
ジョングクがこの家を出て行って、初めて掛ける電話。
「今度の休み、帰って来られないかな?」
≪ヒョン。俺は帰らないよ、もう。 ≫
ジョングクの言葉に胸が苦しくて。
「母さんね… 良くないんだ。」
心の病のせいで入院することは何度かあった。
だけど今回は違って、元々弱かった心臓が不正脈を起こした。
≪ ははっ、そうやってまた病気を理由に
俺を呼び戻せって言われたの?
ヒョンもいい加減あの人達のいいなりに
なるの、やめれば? ≫
ああ...
僕は間違えたんだ。
ジョングクが出て行くと言ったとき、今は父さんや母さんと離れた方がいいんだと思った。
母さんを責めたのはあの一度だけだったし、
心の中ではいろいろ思ってただろうけど、母さんの前で態度に出すこともなかったから...
リラが去ったことで、母さんの具合は良くなるだろうと思っていたし、ジョングクも時間が経てばきっと母さんのことを理解してあげられるだろうからって。
だけど、母さんは日に日に弱って...
ジョングクは母さんをあの人と呼ぶくらいに、
疑念は憤りへと変わってしまったんだ。
「良くないのは、心臓のほうなんだ... 」
≪ ... ... そうだとしても、行かない。
ふたりが居るでしょ?
自分達だけなんて...
全部思い通りになんて、許されないよ。
もう、切るね。 ≫
「まって、ねえ、ジョングク。
おねがいだから... まってよ... 」
聞こえてくるのはジョングクの声でなく、無機質な機械音なのに、耳から離すことができない。
僕はどこで間違えたのかな。
どこから間違えたのかな...
ジョングク。
母さんには、僕じゃダメだったみたい。
大切な人を諦めて、こんなに尽くしても...
「リラ... 」
きっともう、
この名前を口に出すことも、
思い浮かべることさえ
僕には許されないのかもしれない。
.
85人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sayu_(プロフ) - 22.2.22 次のページへの送りボタンの表示がおかしくなっていため修正させていただきました。 (2022年2月22日 18時) (レス) @page1 id: 70f7b238b7 (このIDを非表示/違反報告)
sayu_(プロフ) - 読んでくれた方。お気に入り、評価してくれた方。ありがとうございます! (2021年4月17日 5時) (レス) id: 70f7b238b7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:sayu_ | 作成日時:2021年4月16日 21時