:29 ページ29
.
『お世話になりました。』
この街を出る決心がついた。
店長に挨拶をして、 ロッカーの整理をしに更衣室へ向かった。
「リラさん、さっき聞いたんですけど、
辞めちゃうんですか?
なんか最近リラさんのこと聞いてきた人がい
て、その人が店の周りウロウロしてるのも見た
し、おかしいなとは思ってたんですけど...
大丈夫ですか?」
声を掛けてきたのは、一ヶ月くらい前にここに入ってきた女の子で、
『大丈夫ですよ。
急に辞めて迷惑かけてごめんなさい。』
「そんなそんな。
残念ですけど... じゃあ、お元気で。」
彼女の話を聞いて、やっぱりこの街を去ることにして良かったんだと思った。
『よし。これでいいかな。』
最後に綺麗に拭いてロッカーを閉じると、窓からサイレンの音が聞こえてきた。
その音は大きくなってピタッと鳴り止んだ。
店の近くで何かあったのかと思っていたら、さっきまでここにいた店の女の子が血相を変えて戻っ
てきて
「リラさんっ! 店の前で人が倒れて...
えっと、 リラさんのこと聞いてきた人だと思
うんですっ!」
『っ... 』
店の外へ飛び出ると、目の前で起こっていることに酷く混乱した。
担架に乗せられていたのは、頭に浮かんだ人とは違って... 。
『あ...、あのっ、
「お知り合いですか?」
うまく声が出てくれない。
ただ救命隊員の人の問いかけに頷くのが精一杯だった。
病院まで付き添うかと聞かれて、救急車に乗りこんだ。
ガタガタと震える身体。
自分の身体を抑えるように膝を掴んで力を込めた。
「大丈夫ですか? 呼吸も心拍も安定しています。
切迫した状態ではないので落ち着いて下さい。」
そう言いながら背中をさすって貰って、やっとまともに息を吸えたような気がした。
.
85人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sayu_(プロフ) - 22.2.22 次のページへの送りボタンの表示がおかしくなっていため修正させていただきました。 (2022年2月22日 18時) (レス) @page1 id: 70f7b238b7 (このIDを非表示/違反報告)
sayu_(プロフ) - 読んでくれた方。お気に入り、評価してくれた方。ありがとうございます! (2021年4月17日 5時) (レス) id: 70f7b238b7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:sayu_ | 作成日時:2021年4月16日 21時