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「ヌナ、居たんだ。
電気も付けないで。
灯りが見えないから居ないのかと思った。」
『あっ、おかえり。
お腹すいたでしょ。すぐ用意するね。』
" 感謝しろよ。"
最後にそう言ってユンギさんは行ってしまった｡
帰り道もずっとぼーっとして、時計を見れば帰ってきてから随分と時間が経っていたみたいだ。
「...ナ、ヌナっ！」
『えっ？』
大きな声に驚いて我に帰ると、目の前の鍋が吹きこぼれそうになっていて、咄嗟にジョングクが火を止めてくれた｡
「どうしたのボーっとして。危ないよ？」
『ご、ごめんなさい。
ジョングク、あのね...
「俺やるから、休んでなよ。
疲れてるんだよ。
少しシフト減らしたら？」
わたしが話そうとしたのをジョングクは遮った。
『ジョングク。 少し、話そう。』
「 ... 」
もう一度呼びかけても返事をしてくれない。
『何でも話そうって約束したよね？
ちゃんと話さなくちゃいけないことあるでし
ょ？』
「そんなのないよ。
俺たち幸せにやってるじゃん。」
『そうだね... すごく幸せだったよ。
毎日ジョングクがそばにいてくれて。
だけど、ジョングクは... 辛そうに見えるよ。』
携帯が震える度に、青い顔をして。
思っていた人からの連絡では無いことに
ほっと息をついて。
そんな様子を見ないふりした。
「っ、何言ってるの？
俺は、ヌナと居られればそれでいいって
言ったじゃん？」
『ごめんね。ジョングク。
ヌナ気づいてたのに... 』
臆病で、弱い自分が大嫌いだ。
大切な人が苦しんでいるのに。
きっと、あの街でも。
「ヌナ...
ヌナは、もう何も心配しなくていいんだよ... 」
『ジョングク。ヌナね、強くなりたいんだ。
逃げたり、守られてばかりじゃダメだから。』
このままでいいわけがない。
こんな風にやり過ごしても、
誰も、本当に幸せになんてなれない。
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作者名：sayu_ | 作成日時：2021年10月12日 3時
