：62 _TH ページ22
．
「じゃあ、父さんはリラを追いやろうとした
わけじゃなくて、条件のいい就職先が遠方に
しかなかったってこと？」
何か飲み物でも買ってこようかと聞くと、こっちに着いてから何も口にしていないなんて言うから
慌てて食堂へと引っ張って来た。
注文をして待っている間、まずは何を話せばいいのか切り出せずにいた。
沈黙を破ったのはジョングクだった。
ジョングクと同じように、僕が想像していたリラがこの街を出た理由は間違いだった。
「 リラが頑なに進学するつもりがないって言う
からおかしいとは思ってたんだ。
そうなんだね、家を出て行くように言われてた
んだ... 」
リラはいつも、何も不自由はしてないし
とても感謝していると言ってたのに。
「そうならそうと、ヌナに言ってあげてたら...」
ジョングクの言うとうりそうしていたら僕たちの傷は浅くて済んだのかもしれない。
だけどきっとリラは、親戚にそんなふうに扱われていることを知られたくなかっただろう。
それに、母さんがリラを傷つけたことには変わりない。
父さんもどうするのがいちばんいい方法なのか悩んだんだろう。
「それで... ジョングク... 」
リラは今どうしているのか。
見つかった？ それとも見つけられずにいる？
ここを動けなかった僕がそれを聞くのは卑怯だ。
いや、違う。
リラを見つけたと聞いてしまったら、僕の心の醜い部分がジョングクを妬ましく思うに違いない。
本当は、それが怖いんだ。
「あのさ... ヌナもこっちに帰って来てる。｣
「っ、 そうなんだ。」
リラが、この街に... いる？
「そうなんだって... それがいちばん知りたかっ
たことなんじゃないの？」
うん。そうだった。
リラに会えるのなら、
今すぐに飛んで行きたい。
ずっとずっと、そうしたくてたまらなかった。
だけどそんなこと思っていいのかって...
どんな顔で会えばいいの？って。
リラに何もしてあげられなかった僕が。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sayu_ | 作成日時：2021年10月12日 3時
