46： ページ46
:
風景を写真に収めたり、泳いでいた珍しい鳥を
見てはなんて鳥だろうと検索してみたり、
花に笑い掛けている先輩をこっそり撮ってみた
り。
穏やかに時間が過ぎて行く。
僕がここへ来るのは、いつも沈んだ気持ちの時
だったから。
この人と一緒だと、まるで違う場所にいるよう
だと思った。
中学の頃の悲しい出来事。
誰も見てくれなかった本当の僕。
仮面のように貼り付けていた偽物の笑顔。
気がつけば全てを話していた。
僕を知って欲しかったんだ。
「ここの夕陽を見て、僕の悩みなんてきっと、
小さなことなんだって、言い聞かせるんです｡
まだ僕は夕陽を見て綺麗だと思えるって、
安心できるんです。」
先輩の瞳から、涙がこぼれ落ちた。
その涙が僕を理解してくれたんだと、
癒してくれる、愛しいと、そう思ってしまうの
はいけないことなんだろうか｡
『あなたに出会った時、この人はどうしてこん
なに悲しい目をしてるんだろう、そう思った
の。』
そうしてあなたは、ゆっくりとあの声で語り出
す｡
『わたしね、自分を強い人間だと思ってた。
だけどそれは自分の力なんかじゃなくて、
周りの人に支えられて、そういられただけだ
った。
ジョングクくんは一人で闘ってきたんだね｡』
『ジョングクくんは、
強くて優しい人だね。』
遠くを見つめる彼女の肩にそっと触れて、
僕の方に向いてもらう。
「先輩が救ってくれたんです。
あなたは本当の僕を見ようとしてくれた。
だから...
ずっと、僕の側に居てくれませんか？｣
もう留めてはいられなかった言葉だった。
先輩を苦しめるだろう言葉とわかっていて。
だけど、それは思い違いだった。
先輩は、またあの真っ直ぐな目で僕を見たんだ
から。
『ねえ、ジョングクくん。
わたしたちって似てるんだよ。
誰かを傷つけてしまうことが何より怖くて、
ただ、みんなに笑っててほしいだけなのに｡
だけど、どんなに願っても、それは本当に難
しい事で、目を逸らしている間に、怖がって
る間に、また誰かを傷つける事もあるって。
あなたに出会ってそれがわかったの。』
沈んでしまう前にと､最後の力を振り絞るように
輝いている夕陽。
オレンジの光を背にした先輩は､息を呑むぐらい
綺麗だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「BTS」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sayu_(プロフ) - hirotdmさん» hirotdmさん、素敵なコメントありがとうございます！作者、とても嬉しいです！微力ながら少しでもいいお話になるよう頑張りますね。 (2020年9月22日 19時) (
レス) id: 70f7b238b7 (このIDを非表示/違反報告)
sayu_(プロフ) - ありがとうございました。 (2020年5月31日 21時) (レス) id: 70f7b238b7 (このIDを非表示/違反報告)
sayu_(プロフ) - お気に入りに登録、ありがとうございます！ (2020年5月10日 1時) (レス) id: 70f7b238b7 (このIDを非表示/違反報告)
sayu_(プロフ) - たくさんの方に読んで頂けてほんとに嬉しいです！これからも頑張ります！！ (2020年4月2日 20時) (レス) id: 70f7b238b7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sayu_ | 作成日時：2020年1月30日 16時
