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いつもより早めに掛けた目覚ましを手繰り寄せるように止めて、時間を確認する。八時半過ぎ、余裕を持って起きれた。
あの日から今日までの数日間、神山くんは何事も無かったかのように接してくるから私も合わせるしかなくて、あの時しようとしていたことの真意を知りたいけれど、聞くに聞けなくて。
今日がもしかしたら聞くチャンスなのかもしれない。中間先生が与えてくれたのかもしれない。チャンスは与えられたら、生かすしかないのだから。
『そろそろ家向かう』
先日交換した、中間先生の新しい連絡先からメッセージが届いた。『分かりました』と返事をして荷物をまとめる。
家の前で待っていると、おしゃれな白い車が止まり、窓を開けた先生が顔を覗かせる。
「おはよ」
「おはようございます」
お辞儀をして助手席に乗り込むと、先生からの視線に気がつく。
「制服で行くん?」
「はい。あ、ダメでした?」
「ダメやないけど、 普通は私服やなぁって思うから」
「…やっぱそうですか」
なんだかこういうのって妙に身が引き締まるというか、初めてのボランティアだからと制服を着てきてしまった。
「今日暑くなるから気をつけてな」
「はい」
少し腕まくりをして、シートベルトを閉めた。まもなく、車が発進する。
「神山くんは何で来るんですか?交通手段」
「んー、分からん。でもいっつもバスやからバスちゃう?」
神山くんが住んでる場所からはバスで行けるんだ、と思いつつ、神山くんのことについてまた一つ新しいことを知れたという喜びもあった。
「…なんか、淳太くんが車運転してるのって新鮮」
「俺の車は乗るの初めてか」
「うん、様になってる」
昔から淳太くんは自転車より車を運転するのが似合うなと思っていたし、いつか淳太くんの車に乗せてもらうことが夢と本人にも言ってた。
「Aは昔から変わらんなぁ」
淳太くんが笑うから、「どういうこと?」って聞いたけど、「なんでもない」って濁されてしまった。
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